エイドリアンはぜったいウソをついている/マーシー・キャンベル・文 コリーナ・ルーケン・絵 服部雄一郎・訳/岩波書店/2021年
同じクラスのエイドリアンが「うちには馬がいる」という話は、とても信じられない少女。
いつもぼんやり考え事で、つくえはぐちゃぐちゃ。おじいさんとふたり暮らしで、家も庭もほとんどないみたいだし、靴には穴が開いています。馬には すっごくお金がかかるという話もきいていました。
ある日、お母さん、犬のガブガブと散歩に行ったとき、エイドリアンの姿が見えました。ガブガブは、エイドリアンをみると、とんでいき、かおをなめました。
エイドリアンのちっぽけな家をみて、少女は、<やっぱり 馬は いないよね>といおうとして、言葉をのみ込みます。「それ、ウソだよ!>とさけぶ 自分を 思いだしました。ボールのキャッチをしながら、「馬は とおくにいるんでしょ?」というと、エイドリアンは「毛なみは まっ白でね、たてがみは 金色。目は、世界中のどんな馬よりも大きくて とび色でさ・・」と、はなしはじめます。
少女は思いました。「もしかしたら エイドリアンは 学校にいるだれよりも すごい そうぞうりょくの もちぬしなのかも」
相手の言うことを否定するのは簡単ですが、なぜそういうことをいうのか理解するのは困難です。事実ではないが、豊かな想像力で描かれた馬。思わず言葉をのみこんだのは、自分の想像力の乏しさに 気がついたのでしょう。
親しみやすい絵のタッチ。エイドリアンはどうしてウソをついているのかはでてきませんから、想像力が試されます。