茨城のむかし話/茨城民俗学会編/日本標準/1975年
出だしとおわりはちがうが、竜宮伝説の一つでしょうか。
ひどく貧乏な”むたいち”が、毎日鰐が淵で魚を釣っていた。鰐が淵というところは天狗が住んでいるといわれ、ほかのだれも近づこうとしなかったところ。
ある日、いつものように鰐が淵で釣りをしていると、白い杖をもったおじいさんがあらわれた。おじいさんがいうことには、むたいちが、釣りをするようになってから天狗が姿を現さなくなりお礼をしたいという。連れていかれたのは。水の下の竜宮。ここで夢のような日を過ごしたむたいち。家に帰ろうとすると、お姫さまが くれたのは 打ち出の小づち。
打ち出の小づちをふると、米でも金でも食い物でもなんでも出てきた。それから、むたいちはは、みるみるうちにゆたかになり、一年後には、村の者から万石長者とよばれるほどになった。
何年かたったある日、八幡太郎義家が、奥州の安部氏を滅ぼすために、長者屋敷にとまったとき、村では長者を中心に、義家の連れてきた10万の家来をもてなした。
やがて安部氏を滅ぼして帰ってきた義家一行を、こんども前以上に大判振る舞いをした。
義家は、歓待をされながら、「こんな金持ちの長者を、このままにしておいたのでは、後日の災いになる。今のうちの滅ぼすにかぎる」と、長者の屋敷を焼き討ちにし、家のものを皆殺しにしてしまう。火は三日三晩燃え続け、打ち出の小づちも見当たらなくなった。
このあたりを八幡太郎義家が、とおっていったのでしょうか。竜宮は、きっかけなのか?