大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興・編訳/偕成社/1991年初版
昔話のオチは、ほっとしたり、わらったり、なるほどとうなずけるものがおおいが、なかには、どううけとめるか とまどうものも。
ザンジバル島のチュワカのうさぎと北のウサギが、ばったりとであい、北のウサギは、自分の村へ遊びにくるようさそいます。北のウサギは、客人を村へ連れて行けば、きっとうまい料理が出されるはずだと、考えたのです。
村へ向かう途中、北のウサギは、「ねえ、きみ、じつをいうと、ぼくにはこまった持病があるんだ。頭が痛いと言ったら、きみはこのあたりまで引き返してきて、薬草を集めてほしい、もし、歯がいたいといったら、やっぱりここまでひきかえしてきて、あそこの薬草をつんでほしい」と、チュワカのウサギにいいます。
村につくと、二匹のウサギは、北のウサギの目論見通り、たいそうなごちそうがふるまわれました。食事の用意ができると、二匹のウサギは食べはじめますが、北のウサギは一口食べたとたんに「頭が、頭がいたいよう。」とさけびます。村へ来る途中、北のウサギと約束したチュワカのウサギが、あの野原までもどり薬草をあつめて、村へ引き返すと、北のウサギは、皿の料理の半分までたいらげていました。
チュワカのウサギがこしをおろして食べようとすると、北のウサギがまたさけびます。「歯が、歯が痛いよう」。それをきいたチュワカのウサギは、またあの野原にもどって薬草をあつめました。薬草をもって村へ引き返すと、皿はどれもからっぽで、なにひとつ残っていなく、北のウサギは皿のそばでぐうぐういびきをかいてねていました。
北のウサギは友だちにひもじい思いをさせ、自分だけが満足したのでした。
チュワカのウサギの逆襲を期待していると、二匹のウサギは、しばらくその村にいて、それからまた旅に出るところで おわります。まるで肩透かしをくった感じ。だまされても友だちでいられるのは何よりですが・・・。