アラジンと魔法のランプ/アンドルー・ラング・再話 エロール・ル・カイン・絵 中川千尋・訳/ほるぷ出版/2000年
「アラジンと魔法のランプ」は、「アラビアン・ナイト」のなかでもよく知られている物語のひとつですが「アリババと40人の盗賊」とおなじように、アラビア語原典には収録されていないといいます。
絵本は、こぐま社、講談社、ポプラ社からも発行されていますが、思ったより少ないようです。
原文から訳されたものは、とにかく長いのですが、絵本の場合は流れがおさえられコンパクトにまとめられているのでおおいに参考になります。
とはいってもラングの再話も長く、この絵本では一ページごとに文と絵がつづいています。文章の活字もそれほど大きくありませんが、一ページの文字数が多いので、小さい子が読むのは大変そうです。
物語は、ペルシャで母親と二人暮らしてアラジンが、叔父をかたるアフリカの魔法使いにそそのかされて、ほら穴の中にある魔法のランプを手にするところからはじまります。
ほら穴に閉じこめられたアラジンでしたが、魔法使いがとりかえすことをわすれた指輪のおかげで地上にもどることができます。
ランプを売ろうとして、おかあさんがよごれたランプをみがきはじめると、とたんに魔神があらわれ、アラジンの望みをかなえてくれます。
やがてアラジンは魔神の力を使って大金持ちになり、皇帝のお姫さまと結婚します。
しかし、魔法使いは魔法のランプを取り戻し、アラジンの御殿ごと皇帝のお姫さまをアフリカに連れて行ってしまいます。
アラジンは再び魔法のランプを取り返しますが、粉薬で魔法使いを眠らせ、皇帝のところにもどるので、まだまだ波乱がありそうです。
エロ-ル・ル・カインの絵が評判ですが、指輪とランプの魔神は、この物語のイメージにぴったりです。
皇帝が結婚の条件に、「宝石を山と盛った金のお盆を四十そろえ、美しく着飾った四十人の黒いどれいと四十人の白いどれいにはこばせてまいれ」という、八十人が一ページにびっしり描かれた絵に圧倒されました。
ところで、岩波少年文庫の中野好夫訳では、ラングの再話とはややちがっています。
ラング版では、父親がいないということからはじまりますが、中野訳では、父親が仕立て屋です。
アラジンは放蕩息子で、ランプのある場所まででかけるまで、魔法使いがお酒や果物をもってきたり、アラジンの仕事のことを世話するそぶりをしめすなどが長くつづきます。
ランプのある場所には、世にも珍しい果物やあらゆる宝石もあります。
魔法使いはアラジンをランプのある場所に閉じこめてアフリカにかえり、それ以降登場しません。
パドロルブドル姫(名前がでてきます)と結婚するまでの後半部分も長く続きます。
なにしろ、文庫本で100ページ弱あります。中野訳では魔法使いが再登場しませんが、原文には再登場するので、まだまだ長い物語です。
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