グリムの昔話3/フェリックス・ホフマン:編・画 大塚勇三・訳/福音館文庫/2002年
アランビアンナイトの「アラジンと魔法のランプ」とシュチエーションがにています。
戦争が終わって、王さまから文無しで放り出された兵隊が、森の中でみつけた一軒の家。
仕事をしてくれると泊めてやると言われ、庭をほりかえします。しかし、日が暮れるまでにしごとをかたづけられませんでした。
この家にすんでいるのは魔女でしたが、馬車一台分の薪を割って、こまかくするなら、もう一晩泊めてあげるといわれ、一日かかって薪をつくります。
さらに魔女は、水の枯れた古い井戸に落ちた青いランプを拾ってくるならもう一晩とめてやろうといいます。
あくる日、兵隊は井戸のなかで青く光るランプを見つけ、井戸からひきあげてくれるよう合図します。先にランプを取り上げようとする魔女のたくらみにきがついた兵隊がランプをわたすことを断ると、魔女は、すさまじくおこりだし、兵隊を井戸の中におっことして、行ってしまいます。
しょげかえった兵隊が、最後の楽しみにポケットに残ったパイプでタバコをふかしはじめると、ふいに小さな黒いこびとがひとり現れます。
「お望みのことを、なんでもやらなきゃならないんでさ」というこびとに、井戸からつれだしてくれるようたのんだ兵隊は、青いランプと魔女が集めた宝物をもって地面の上にでます。
次に兵隊が「あの魔女をしばりあげ、裁判所につれていけ」というと、こびとはいくらもたたないうちにもどってきて「すっかり、かたをつけました。あの魔女はもう、首つり台にぶらさがってますよ」といい、つぎのいいつけを聞こうとしますが、「いまのところは、なんにもない」という兵隊の言葉を聞くと、ふっと消えてしまいます。
次に兵隊は、文無しでおいだし、ひもじい思いをさせた王さまに仕返しするために、こびとをよびだすと、王さまのお姫さまがベッドに入ったら寝ているまんま、宿屋につれてくるよういいます。女中にして働かせるというたくらみです。
次の朝、お姫さまは、部屋の掃除や長靴をみがいたり、いやしい仕事をさんざんやらされたふしぎな夢をみたことを王さまに話します。
王さまは、正夢だったことかもしれないと、ポケットにエンドウ豆をつめて穴をあけ、つれていかれたら豆がおっこちるようします。しかし目に見えない姿で話をきいていたこびとは、その晩眠っているお姫さまをかついで、こぼれおちた豆をひろいながら、兵隊の宿屋につれていきます。
お姫さまは、またもやニワトリが鳴きたてるまで女中仕事をしなければなりませんでした。
王さまは、こんどはベッドにはいるとき靴をぬがないでおいて、むこうから帰る前に、片方の靴をかくしてくるようお姫さまにいいます。
次の朝、王さまは都じゅう、すみずみまで、おひめさまの靴をさがさせます。靴がみつけられた兵隊は逃げ出しますが青いランプもたくさんの金貨を置き忘れてしまいます。そして追いつかれて牢屋に放り込まれてしまいます。
兵隊が鎖りにつながれて窓のそばに立っていると、昔の兵隊仲間がとおりかかります。ポケットにたった残っていた一枚の金貨で仲間に青いランプをもってきてもらった兵隊は、裁判所で死刑判決がでて外にひきだされたとき、一つだけ願いをかなえてくれるよう王さまに頼みました。
兵隊がパイプをとりだし青いランプでタバコに火をつけると、こびとが現れ、王さまも裁判官も捕り手どもを叩きのめしてしまいます。
王さまは命が助かりたいばかりに兵隊に国をやり、お姫さまも兵隊のおよめに!
この兵隊、仕返しをしたいなら、お姫さまではなく、直接王さまにしたほうが早いと思うのですが・・。また、女中仕事がいやしいというのも、いまでは、ひっかかるところ。
ふしぎなこびとは、青いランプでパイプタバコに火をつけると現れますが、ヨーロッパでパイプタバコがみられるのは1500年代以降。南アメリカの一部のインディオと、アメリカ本土全域でインディアンが行っている先住民族の文化がヨーロッパに伝えられ、そこから世界各地にひろまっているようです。