夜明けまえから、暗くなるまで/文・ナタリー・キンジー・ワーノック 絵・メアリ・アゼアリアン 訳・千葉茂樹/BL出版/2006年
アメリカ北部のバーモントにある丘の上の農場のまわりには、メープルやリンゴの木。
牛を飼い。畑にはジャガイモ、トウモロコシ、ニンジン、トマト、レタス、キュウリ、カボチャなどの野菜。
夏には、野イチゴ、ラズベリー、グースベリー、カランツなどが実ります。
厳しい冬が7か月も続き、ときにはマイナス45度以下にまでさがる農場の一年の暮らしが、綿密な版画で色あざやにえがかれています。
農作業や牛の世話は家族総出で、「夜明けまえから、暗くなるまで」続きます。
遅い春には砂糖作りがはじまります。メープルの木に穴をあけ、その穴に金属でできた注ぎ口を打ち込み、バケツをつるします。バケツに樹液がたまると、タンクにうつし砂糖小屋へ。何千本という木にバケツをつるすのは、手足がこごえるほどの時期。
四月はぬかるみの季節。泥がかわき草が生えはじめると、牛が逃げ出さないための柵作り。
春の野菜作りの前には、霜柱がおしあげた畑のたくさんの石を拾い集めます。
夏は干し草づくり。たくさんの雑草の草むしり。
九月には学校。秋には木々の紅葉。そしてリンゴを収穫し、木を切り倒して冬の準備です。
一年は、学校と家と教会、そして祖母の家での四つのクリスマスでおわります。
そんななかでも、ぬかるんだ道に、泥をはねあげ、魚釣り、夏の夜は蛍の光で野球、冬には雪合戦、木の上から、サイロから、干し草用の荷車から飛び降りるスキーなどの楽しみもあります。
「どこで暮らしても、きっと、ここがなつかしくなるんじゃない?」という、少女の問いに、兄たちの答えは?
巻末には作者の幼いころの60年ほど前の家族写真がのっていて、実体験から描かれたようです。決して恵まれた環境ではありませんが、大地に根を下ろし逞しく暮らす家族。ここではゆっくりと時間が流れ、テレビもネットもありませんでした。