子どもも、大人も楽しめる江戸小ばなし/岡本和明・文/フレーベル館/2005年初版
小ばなし、落語、昔話の底流はおなじでしょうか。
・欲張り
働き者のおじいさんが、山へ柴刈りにいって帰ってくると、なんと二十四、二十五歳の若者になっていました。滝の水を一口のんだら、若返ったと聞いて、おばあさんが滝に出かけましたが、いつまでも帰ってこないで、おじいさんがいってみると、おばあさんの着物にくるまった赤ん坊が滝つぼのところで、「おぎゃあ、おぎゃあ」と、ないていました。
昔話の「若返りの水」をもっとコンパクトにした小ばなしです。
・どじょう
小僧さんが、和尚さんのいいつけでどじょうを買いに行った帰り、近所の子どもたちから声をかけられました。
「とっくりのなかにはお酒が入っているの?」
「ちがうよ」
「醤油がはいっているの?」
「ちがうよ」
「じゃあ、なにが入っているのさ?」
「あててみな」
「あたったら、なにをくれる?」
「なかのどじょうを、一匹やるよ」
落語のようなオチ。
・どら息子
仕事もせず、毎日遊んでばかりいる息子を見かねた親戚が集まって、意見をしていました。
「お前は親に働かせて、自分ばかり遊んでばかり。そんなことでどうする。親というものは千両、万両だして買えるもんじゃないんだ。これからは、けっして親を粗末にしてはならんぞ」
すると、息子はすなおに
「おっしゃるとおり、お金で買えないのが親でございますが、売ろうと思っても、買い手がございません」
・しゃくなひと言
向こうからやってきた友だちに、「おっ、そこの貧乏神、どこへいくんだ?」と、からかうと、友だちは「これからお前の家へいくんだ」といって、通り過ぎてしまいます。
用事を済ませて帰る途中、さっきの友だちがやってきたので、こんどは「福の神」、どこへいく?」というと
「今、お前の家から出て、帰るところだ。」
貧乏神はご遠慮願いたいのですが、福の神に去られるのも困ります。