星どろぼう/アンドレア・ディノト・文 アーノルド・ローベル・絵 やぎたよしこ・訳/ほるぷ出版/1978年2011年新版
まず、夢のあるタイトルで、どんなふうに展開するかワクワクします。
ひとりのどろぼうが、空の星にさわりたくてさわりたくて、梯子をのぼり一番近い星にさわって、ひっぱってみると すぐにとれました。次から次へと手を伸ばし、とれた星をポケットにいれると、たちまちいっぱい。
どろぼうは、何度も何度も星をとってくると、樽に入れて釘で打ち付け、地下室に隠しました。
空に星がひとつもなくなって、村人たちはびっくり仰天。
村の年よりは、「のこったたった一つのものを まもらねばならぬ」と、月をまもることにしました。星をぬすんだやつは かならず 月もほしがるだろうと 思ったのです。
勇敢な若者がこん棒とつなをもち、梯子で満月にのぼっていきました。
一方、どろぼうは 月の後ろに星があるかもしれないと、もういちど空に上る準備をしました。けれども、木ぎの てっぺんに 月が かっこうよく かかっているのをみて、星が見つからなくても月がほしいやと、月に網をかけようとしますが、かくれていた若者につかまってしまいます。
村人がどろぼうの地下室から樽をもちだし、蓋をあけると、星が いっぺんに 四方八方へ飛び出し、村人は星に埋もれてしまいます。
村中の子どもたちがあつまってきました。
「これで、村中の人たちが、子どもたちまで、星にさわったことになる」と、どろぼうの独り言。
星をもとにもどすことになったどろぼうが、梯子をのぼって星を空に押しつけますが、星はつーっと 地面に落ちて、草の上でひかっているだけ。のり、タール、パンのねりこでもだめ。星はつーっと おっこちてしまいます。
村人たちが考え込んでいるあいだに、男の子が星に向かって 指を一本突き出し、星にさわると、星は、ぱーっと 光をはなち、鉄砲玉みたいに空にもどって、ぴったと空に くっつきました。
男の子が「さわらせてって 心の なかで いいながら さわっただけ」というと、校長先生は、「そうだ! あの星は、この子が”さわらせて”さわらせてと おもったのを、ねがいごとだと 考えて、空に かえったんだ! ねがいごとは”空の星”に するものだからね」と気がつきます。
それからは、村人たちが、つぎつぎにねがいごとをすると 星たちはひゅーっ、ひゅーっ、と空にもどっていきました。
ところが、星が一つもなくなりどろぼうは、ねがいごとをすることが できませんでした。
どろぼうは、ねがいごとをする資格などないといわれてしまいますが、どろぼうのねがいは、星にさわること。そして村中の人たちも星にさわることができたのは、どろぼうのおかげでした。どろぼうもいつまでも星を独占しようとは思っていなかったのでは。
アーノルド・ローベルの描く星は、花びらのようで、表紙の見返しと裏表紙の見返しにある樽いっぱいの星が、輝いています。
少し長めの話ですが、ねがいをこめるには、地面でなく、やはり空に星が必要です。