つぶむこ/小林輝子・再話 飯野和好・絵/福音館書店/2006年
田んぼの水漏れに難儀していた男が、「水が漏れないようにしてくれたら、つぶでも だれでも おれのむすめを よめにやってもよいがな」とつぶやいていたのを聞いたつぶは、その田んぼに はいって なんにちも なんにちも 泥を つめていた。
ようすをみにきた一番上のむすめは、「のろまな つぶめ、いつまでも 田さ はいっていろ」と、大きな石を つぶめがけて べーんがりと 投げ込んで かえってしまいます。
二番目のむすめは、小石を ぱーらぱら ぱーらぱらと、つぶを めがけて 田さ なげいれて、「だりゃあ、つぶの よめっこになんかに なるもんか」と、しりをたたいて かえってしまいます。
すえのむすめは、ねばる 土を 田の すみっこさ そっとおいて、「つかれたら やすんでたもれ」と かえっていきます。
約束をはたしたあと、すえのむすめが よめになることを 承知するのが、昔話のパターンですが、この再話では、事前に むすめたちに 話をしています。大きな石、小石、ねばる土で固めて 水の漏れない 田んぼが出来あがりますが、三人の むすめがいないと、水の漏れない田んぼは できあがらなかったかも。
七日後、むすめをもらいに こいといわれ、つぶが 男の家に いきますが 家のまわりは 幅のひろい せきになっていて、みずがたまっていました。ただそこには、ほそい棒が 一本たててありました。すえむすめに助けられたつぶは、「おらの からだを おもいっきり ふんずけてけろ」といいます。すえむすめが おそるおそる つぶを ふんづけると、つぶは ぱかっと われて、目を見張るほど りりしい 若者に なり、すえむすめと じさまと ばさまのところへ かえっていきます。
このつぶは、子どものいない夫婦が、さん、しち、にじゅういちにち、いちにちも かかさず 観音さまにおまいりして授かった小さな貝(つぶ)でした。このつぶが口をきくようになったのは、夫婦が、じさま、ばさまに なったころでした。
人物の存在感が抜群ですが、好みがわかれるかもしれません。