かじ屋と妖精たち/イギリスの昔話/脇明子・編訳/岩波少年文庫/2020年
ヒルトン屋敷に住みついているブラウニーは、いたずら好き。塩壺に砂糖を入れるやら、ビールのコショウを入れるやら、椅子はなげたおし、テーブルはひっくりかえすやら、まったくなにをしでかすか見当がつかない。
ところが召使いたちが、ボールにクリームを入れとくか、パンにハチミツを塗っとくかすれば、皿洗いを全部やって、台所をきれいに片づけといてくれた。
ところがある晩、召使たちが夜更かししておったら、なんとブラウニーが 焼きぐしを回す鎖につかまって、ぶらんぶらんやりながら、こんな歌をうたっていた。
悲しや、悲しや、どんぐりは
さっぱり木から、落ちてこん
そのどんぐりが、芽を出して
それが大きな木になって
それで作ったゆりかごで
ゆ-らりゆらりと、赤んぼが
育って大人になったらば
おいらを放してくれように
悲しや、それは、いつの日か
みんなは、そのブラウニーのことをかわいそうに思って、近所にいたたニワトリ飼いのばあさんに、どうすればそいつを放してやれるかのと、たずねてみた。ばあさんの話によれば、仕事をしたのに対して、食べ物や飲み物なんかでなく、もっと長持するお礼をもらったら、すぐにいってしまうのだそうだ。そこで、みんなは、緑色の布で、フードのついたマントを作り、それを暖炉のそばにおいて、かげからこっそりようすを見ていた。するとブラウニーがやってきて、フードつきのマントをみると、さっそくそれを着こみ、片足で立って、ぴょんぴょん跳ねまわりながら、歌をうたった。
マントを、もーらった
フードも、もーらった
これでおしまい おいらの仕事
ヒルトン屋敷に、おさらばさ
そして、それっきりいなくなり、二度とその姿をみることはなかったということだ。
ところで、ブラウニーって?
小さくておかしなやつで、半分人間、半分コブリンのようで、もじゃもじゃと毛深くて、とがった耳。宝を埋めて、それを守りたいなら、埋めたところに殺したばかりの子ヤギか子羊の血を、ちょっぴりまいとくといい。宝とそのからだをまるごと埋めると、ブラウニーが 近づくものを脅かして、あんたの宝をまもってくれる。
日本の貧乏神どうよう、外国にも屋敷に住みついている存在があるという話。いなくなったあとも気になります。グリムの「こびとのくつ屋」も、服やくつを手に入れると、いなくなる存在です。