ばあばの手/西澤怜子・作 山中冬児・絵/銀の鈴社/2009年初版
ファンタジーやメルヘンもいいが、3月10日の東京大空襲の死と赤ちゃんの誕生という死と生が交差するこんな話もじっくりと聞きたいもの。語ってみたい気もしますが、30分は超えそうなので、これも手にあまるかもしれません。
今、さちこはお母さんとの二人暮らし。というのはお父さんが戦地にいっているからです。
さちこの家に、帽子や服があちこちこげて、黒くすすけた顔の男の人と、防空頭巾もリュックにも焦げ、はきものもはいていない女の人がとびこんできます。空襲で家をやかれ、かろうじて逃げだすことができた、おじいさん、おばあさんでした。
さちこは、おばあさんの故郷、群馬に疎開して、一年生になります。
二年生の5月、さちこは、お父さんという題で、作文をかきます。しかし同じ作文があり、先生からどちらがまねをしたかと問われ、同級生がさちこがまねたとこたえますが、さちこは何もいえません。なきながら訴えるさちこに、「生まれたばかりの赤ちゃんをみにいかないか」とおばあちゃんにさそわれます。
産婆のおばあちゃんは、タライにお湯をいれて、赤ちゃんの体を洗い始めます。さちこもおばあちゃんにいわれて、手を湯の中にいれて、赤ちゃんの足にさわってみます。
おばあちゃんと孫が中心で、お母さん、お父さんの出番は少ないのですが、お父さんが生きてかえってきたかどうかは何もふれられていない最後が、いつまでもおをひきます。
空襲の悲惨な状況も、聞き手が想像するほうがインパクトがあるのかもしれません。