雪の白いのは/シャハト・ベルント編 大古幸子・訳/三修社/2006年
土地はほんのわずかしかなく、雌牛が一頭いるだけの農夫のキューピッツとうさんが町へ行こうとしたとき、途中でお金のたくさん入った財布を見つけました。ちゃんと拾ったことを届けないと罰せられます。自分だけならなんとかなりそうだが、女房はだまってはいないだろうと策を講じます。
まずは、ふたりいっしょにテンの罠を仕掛けます。そして夜になると、キューピッツとうさんは、市場で買った大きなウナギを罠の中においておきます。翌朝、奥さんが罠をみてみると、そこにはウナギ。はじめは食べたくないと言っていた奥さんも、においに誘われ、おいしいおいしいと言って食べました。
つぎの日、奥さんの目を盗み、肉屋で買った脂身を細かいサイの目に切り、窓から外へまき散らしました。夫婦がちょうど寝床に入ったとき、外で犬たちの鳴き声がきこえ、奥さんは、外を見て「窓の外は真っ白よ。雪が降ったんだと思うわ。」とさけびますが、キューピッツとうさんは、「脂身が雪みたいに降ってきたんだ。拾い集めて家の中に運び入れよう」と、脂身をふたりで拾い集めました。そして、翌朝、朝食用に焼いて食べました。
ここで、キューピッツとうさんは、はじめて財布のことを奥さんに話し、だれにも話さないようにいいます。
だれにも話さないと言っていた奥さんは、村長の奥さんに財布を拾ったことを話してしまいます。絶対にいわないといっていた村長の奥さんも、村長に財布のことを話してしまい、村長は役所に報告しました。
二、三日して役所からよびだされ、財布のことを問いただされたキューピッツとうさんは、「お金なんぞみつけませんでしたよ」と申し立てます。役人が奥さんをよびだし、財布のことを問いただすと、本当のことだといいます。そして、「テンの罠で大きなウナギを捕まえたり、夜に脂身が雪のように降ってきたのは、ほんの二、三日前だったじゃないの」と、亭主にたずねました。これを聞いた役人は、キューピッツのいうほうが信用できるといいました。
こうしてキューピッツとうさんはお金を自分のものにしました。
昔も、ネコババはダメとされていたのでしょうか。