青森のむかし話/青森県小学校国語研究会・青森児童文学研究会/日本標準/1975年
「牛方と山姥」の青森バージョンですが、途中鬼ばばあから逃げ出すあたりは「長靴をはいた猫」風です。
タラを売り歩いていたサブが、鬼ばばあから脅かされ商売物のタラだけでなく、赤べごっこ(牛)まで食べられ、次には命まで狙われて、逃げ出します。
サブは、カヤかりをしている人のところにいって隠してくれるよう頼み、つぎには船大工のところでも隠してくれよう頼み込みます。
ところが、カヤかりの人も、船大工も、鬼ばばあから「こねぇだま、なんだば おまえどを、かみしめるぁ」と、脅かされ、すぐに隠れた場所を白状してしまいます。
家に逃げ帰ったサブは、ほし栗をふところにいれ、縄で屋根裏部屋にかくれます。
鬼ばばあが、家にやってきて縄をのぼりはじめると、サブは ほし栗をピチカチッと かみます。すると鬼ばばあは、縄がきれそうだと 縄をおりますが、きらめきれず、またのぼりはじめます。するとサブは、もういちどほし栗をピチカチッとかんで、「縄が切れるところだ」と、叫びます。あきらめた鬼ばばあが、炉に火をごんごんもやし、眠ってしまうと、サブは、じゃんぐと煮立った湯を寝ている鬼ばばあに がおっとかけます。すると、鬼ばばああは ぐにゃぐにゃと、じぇんこ(お金)になってしまいます。
「タラけろでぇ」「おまえば食いてぇでぁ」「これければ、あすから、あきないにならねもぇ」など、鬼ばばあとサブのやりとりは、共通語ではどぎつくなりますが、方言だと不思議なリズムがうまれます。