橋の上で/湯本香樹実・文 酒井駒子・絵/河出書房新社/2022年
たった一度の出会いが、橋の上で川に飛び込むことを考えていた少年を思いとどらせました。
やがて、その橋をとおらなくなり、ふだんは忘れているようになりました。いつのまにか橋はかけかえられていましたが、昼間の音がからだのなかで いつまでもひびいて眠れない夜に、耳をふさいで、地底の水の音をきくことがありました。それは、学校帰りの日、何年も何十年も、脱いだことがないみたいに見えたセーターを着たおじさんの言葉でした。
おおきくなって、かぞえきれないたくさんの人たちとの出会いや新しい風景をみることができたのは、あの日、川にとびこんでいたら、なかったことでした。
”闇”を抱えた人に 自分だったらどんな言葉をかけられるか自問しました。(やはり無理!)
静かに心理を表現する絵本。ほとんどモノクロで 淡い感じの色調は ずっと心に残りました。