うぬぼれ鏡/あまんきみこセレクション4 冬のおはなし/三省堂/2009年
中学三年生の節子は、しんせきの叔母が「この家にくると、自分の顔がきたなく見えてこまるわ。うぬぼれ鏡を、ひとつぐらい、おいてらっしゃいよ。」といったのをききとがめます。うぬぼれ鏡ってなにと聞くと「見る人をきれいにうつす鏡のことよ。くもっているような鏡で顔をみると、年とった女でもわかく見えるからね」というこたえがかえってきます。節子の母親は、家じゅうの鏡という鏡は、いつもしみひとつないように、鏡をたいせつにしていたのです。叔母のことばは、それっきり忘れてしまうのですが・・・。
ところが一年後、母親が胃癌で入院しますが、もう手をつけようもなくひろがっていて、そのまま傷口をふさいだだけでした。自宅で療養をはじめますが、母親は流動物しかとおらなくなり、細く細くやせ細ってしまいます。
母親は、もう鏡はいらない、自分の顔をみるのがこわいといいます。
節子は、もういちど母に鏡をみせてやりたい、それも真実をうつす鏡でなく、叔母の言葉にあったうぬぼれ鏡を思い出し、あちこちの店でことわられながらも、小さな店で鏡を見つけますが・・・。
老いを感じるとそれだけで鏡と向き合うことがこわくなりますが、節子の母親は余命が長くないというのを感じていますから、どんな気持ちだったでしょう。
鏡はみたでしょうか?
死がテーマになっているだけに、複雑な感情におそわれます。ほかのテーマだったら別のうけとめかたができそうですが。
聞いてみたい、そのあとでどんな感想があるのか知りたい話です。
ためしに、話をするとしたらどうかと何回も読み直してみましたが、男性には到底無理なようでした。
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