脳梗塞の治療機会広がる 血栓溶解療法 適応可能時間が拡大 福井県内の病院で対応始まる
2019年6月27日 (木)配信福井新聞
一刻を争う超急性期の脳梗塞を治療する「血栓溶解療法」のガイドラインが見直され、今年3月から適応可能時間が拡大された。福井県内の医療機関でも対応が始まり、福井赤十字病院(福井市)では見直し後、従来は同療法が施せなかった急患に適用された。同病院の専門医らは「脳梗塞が治るチャンスが広がった。異変があればすぐに救急車を」と呼び掛けている。
血栓溶解療法は血栓溶解剤「アルテプラーゼ」で脳の血管に詰まった血栓を溶かす薬物療法。アルテプラーゼは脳梗塞の治療薬として2005年に認可された。もろくなった血管の血流が再開すると出血する可能性があるため、日本脳卒中学会の指針では適用条件を「発症時刻から4時間半以内」としていたが、18年に発表された海外の医学論文を受け、今年3月に「(異変)発見から4時間半以内」と変更した。
発症時間が特定しにくい就寝時のケースでは、従来の起点は「最後に元気だと確認された時刻」だったが、新指針では「(異変を)発見した時刻」に繰り下がった。CTやMRIの検査結果によって、血栓溶解療法が行えるケースが従来より増えたことになる。
福井赤十字病院では4月中旬、就寝中に左手足のまひが起きた70代男性が新指針に該当。午前6時ごろの救急搬送から約40分後、血栓溶解療法を施しまひの改善に至った。男性は翌月退院し経過は良好だという。脳神経外科副部長の佐野徳隆医師は「従来なら血栓溶解療法が実施できないケースだった」と話す。
同病院には年間約300人の脳梗塞の急患が搬送されてくるが、一刻を争う中でCTやMRIなどの検査と並行して、家族の同意を得るなどチームワークが欠かせないという。脳梗塞を含む脳卒中全般の対応に力を入れており、脳神経外科と神経内科の専門医をはじめ看護師、放射線技師、臨床検査技師らでチームをつくり対応する一方、医療スタッフ数十人が月1回のカンファレンス(研修会議)で対応力向上を図っている。
「新指針で脳梗塞の治療のチャンスが広がったといえる」という佐野医師は「手足が動かない、しゃべりにくいといった異変があれば、1分でも早く救急車を呼んでほしい」と訴える。神経内科部長で対応チームの一員でもある高野誠一郎副院長は「治療までの時間を短縮できるように、スタッフを挙げて取り組んでいく」と話している。