大阪が主導、兵庫と京都が追従…寝耳に水「大阪モデル」・トップ交渉なし
2020年5月22日 (金)配信読売新聞
大阪、兵庫、京都の3府県が、首都圏や北海道に先行して「緊急事態」を脱した。宣言が発令された4月7日から1か月半。新型コロナウイルスへの一連の対応は、大阪が主導し、兵庫や京都が追従する形となった。結果的に休業要請の対象業種や大幅解除の時期などで足並みがそろい、大きなハードルを乗り越えたが、課題も浮かび上がる。
「3府県共通の対策で、大きな効果が発揮できた」。大阪府の吉村洋文知事は21日夜の記者会見でこう強調し、すでに大幅に解除していた休業要請を、23日午前0時から追加で解除する方針を正式に明らかにした。兵庫県の井戸敏三知事と、京都府の西脇隆俊知事も同じ時間帯に記者会見し、追加解除を公表。時期や業種は大阪とほぼ同じだった。
会見では各知事とも3府県協調の成果を評価したが、実情は、大阪府が終始主導する形で進められた。その象徴が、3月19日に吉村知事が打ち出した「大阪―兵庫間の往来自粛要請」だ。
厚生労働省は前日の18日、両府県の感染者数が2週間後に10倍以上の3000人を超えるとの試算を府に示していた。同省は非公表を求めていたが、吉村知事は夕方のテレビ番組で、その試算を根拠に、3月20~22日の3連休中の往来自粛を要請すると突然明らかにした。
当時は緊急事態宣言が発令される半月以上前。踏み込んだ対応に両府県の住民に驚きが広がった。大阪府からの事前調整はなく、兵庫県側にとっては「寝耳に水」。往来自粛要請について、井戸知事は「むこう(大阪側)が勝手に発表した」と不快感をあらわにし、蚊帳の外に置かれた京都府の幹部も「兵庫との往来のみを自粛要請したことで、京都への人出が増えた」と不満を漏らしていた。
往来自粛要請の結果、感染者数は試算通りに膨らまず、その後も大阪府は先手を取り続けた。4月7日の緊急事態宣言発令直後は吉村知事は「外出自粛の効果を見極めて判断する」と、経済活動に影響が大きい休業要請に慎重な考えを示していた。しかし、感染者の急増を受け、わずか3日後の10日、休業要請を出す可能性を示唆。実際に14日に休業要請を出すと兵庫県も15日から追随せざるを得ず、京都府も18日から同調した。
大阪府が5月5日に公表した休業要請を解除する独自基準「大阪モデル」についても両府県は追随し、同様の独自基準を作った。
京都府の西脇知事はテレビ番組で、「関西モデル」を作れなかったのかと問われ、「(大阪から)根回しや相談はなかった」と説明。府幹部は「担当課同士では綿密にやりとりしていたのに、大阪モデルは突然出てきた」とぼやいた。
関係者によると、一連の対応については3府県の担当職員が連絡を取り合い、知事同士が直接やり取りすることはなかったという。
結果的に後手に回った形になり、兵庫県の幹部は「最も感染者が多い大阪の対策に合わせざるを得ない面もあった」と明かした。
第2波に向け、3府県がどのように協調するかが課題となるが、21日の会見でも微妙なズレが露見した。井戸知事は「(3府県が加盟し、自身がトップを務める)関西広域連合として対応していきたい」と、大阪主導で進むことを牽制したが、吉村知事はこう強調した。
「大阪は(関西の)経済の中心地。大阪がリーダーシップを発揮し、協調していくことが京阪神全体の感染を抑えることにつながる」