「ウイルス流出」真相握る女性、中国テレビに「検体調査まで存在知らず」
新型コロナウイルスが中国・武漢市の武漢ウイルス研究所から拡散したとする米国の主張を巡り、真相のカギを握るとされる女性研究員が、中国のテレビ局による25日公開のインタビューで疑惑を否定した。中国政府は関係者を総動員してウイルス流出説の打ち消しにかかっている。(中国総局 田川理恵)
この女性研究員は、コウモリを宿主とするウイルスの研究で知られる石正麗氏で、国営中国中央テレビの海外放送を手がけるCGTN(電子版)がインタビューを伝えた。
石氏は、公開された9分の動画の中で、新型ウイルスの存在について、感染者の検体が研究所に持ち込まれるまで知らなかったと主張した。昨年12月30日にその検体を調べた結果、「我々が知っているウイルスの配列とは異なることが証明された」という。ウイルスの遺伝子配列情報の解析などの作業を「遅滞なく行った」とも語った。
中国当局はウイルスの流出も隠蔽もなかったと強調している。CGTNは24日にも、米国の主張を「捏造だ」として否定する研究所の女性所長のインタビューを報じていた。
石氏はフランスの名門大でウイルス学の博士号を取得し、かねて「バット(コウモリ)ウーマン」の異名で知られていた。武漢市の地元紙によると、2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)大流行の後、自ら洞窟に赴いて野生のコウモリを捕獲し、ウイルスがコウモリに由来することを突き止めたという。
新型コロナウイルスは研究所から流出したのではないかとの説がささやかれ始めて以降、石氏の動向は中国の内外で注目を集めてきた。仏紙ル・モンドは4月下旬、石氏が、研究所からの流出の可能性を危惧していたと報じた。
中国のネットメディア「澎湃新聞」によると、石氏は2月2日に流出疑惑を全面否定し、SNSで友人ら向けに「自分の命にかけても保証する」と投稿していた。ただ、今回のインタビューまで公の場に姿を現さなかったため、外国への亡命説など、様々な臆測が飛び交っていた。