新型コロナで続く病院敬遠 小児科離れ克服へ試行錯誤
新型コロナウイルスの影響が、小児科にも広がっている。外出自粛で受診を控える家庭が増え、緊急事態宣言解除後の6月に入ってからもその傾向が続く。「小児科離れ」とも呼べる状況を克服しようと、兵庫県伊丹市の小児科では、感染予防策として屋外診察を導入。大人向けに抗体検査を始めるなど、地域医療の「とりで」として試行錯誤を続けている。
「来院者は感染拡大前の3、4割ほど。患者さんが少ないのは良いことですが...」。同市野間3のおの小児科。取材時の6月上旬、午前診察終了の30分前には来院者がゼロとなり、小野英一院長(46)はため息をついた。
同病院では学校園の一斉休校が始まった3月上旬から患者が激減。例年なら1カ月の延べ約千人ほどの受診者が4月は半分以下に。
小野医師によると、感染予防で受診を控え、市販薬や余っていた薬で症状を抑える家庭が多いとみられる。結果として「熱が下がらない」「ぐったりしている」など、悪化してから駆け込んでくるケースが増えたという。小野医師は「初期の治療で済んだはずが、小児科では手に負えず2次救急につなぐことになる」と、高度医療機関へのひっ迫を懸念する。夏はプール熱や手足口病、皮膚のトラブルなどが増える時期で「心配があればすぐ受診してもらいたい」と訴える。
感染拡大に募る不安の声を受け、同病院では5月中旬から屋外診察をスタートさせた。入り口付近に日差しよけのタープを設置し、医師と看護師が院内から出てきて診察。会計も可能。利用は数件にとどまるが、上野亜子事務長(48)は「再び外出自粛になれば、受診方法の選択肢として考えてもらえれば」とする。
患者の激減は個人病院の経営に深刻な打撃を与えている。「医療機関は『病院に来て』と言いにくいが、危機に立たされている病院は多い」と打ち明ける。
苦境をしのぐため、同病院では小児科の枠を超え、大人向けに新型コロナの抗体検査を6月から導入した。検査キットを250セット入荷。血液を少量採取し、15分ほどで結果が判明する。保険適用外のため1回1万円。「サービス業や教育・保育関係者など、人との接触が多い方が検査結果を生活の目安にしてもらえれば」としている。