新型コロナ:新型コロナ 無症状でPCR「非効率」 発症前日、陽性的中33% 米チーム研究
新型コロナウイルスの感染者が、発症する前日にPCR検査(遺伝子検査)を受けても、「陽性(感染者)」と判定されたのは3人に1人にとどまるとの分析を、米ジョンズ・ホプキンズ大のチームがまとめた。発症4日前では皆無だった。新型コロナは発症前でも感染力が強く、症状のない人も広く検査すべきだとの声もあるが、PCR検査だけでは感染者の特定に非効率で、今後、慎重論も出そうだ。
チームは、欧米や韓国などで行われた7研究(患者数計1330人分)のPCR検査データを基に、発症前後で感染者を陽性と判定できるかどうかを分析した。
その結果、発症4日前に陽性だったのは0%で、前日でも33%にとどまることが分かった。発症日でも62%で、3人に1人は陽性と判定されなかった。的中率が最も高くなったのは発症3日目の80%で、それ以降は低くなった。
理由について、ウイルス量の変化や検体の採取方法上の課題が考えられるという。チームは「PCR検査だけに頼らず、医師の判断や濃厚接触の有無などを総合的に検討することが重要ではないか」としている。
成果は5月13日付の米内科学会誌(電子版)に掲載された。【渡辺諒】
◇検査拡大に慎重論も 専門家「高額費用無駄の恐れ」
発症前にPCR検査を受けても感染者の特定が難しいことが明らかになった。感染対策を目的に症状がなくてもPCR検査をすべきだとの声が医療機関などから上がり、検査を広げようとする動きがある。だが、発症前に感染者が「陽性」と判定される割合は少なく、「陰性」でも感染者が紛れ込む可能性も大きく、感染していないことの証明にならない。専門家は「検査をするなら、せめて精度が高まる発症者に行うべきだ」と指摘する。
PCR検査では、ウイルスの一部の遺伝子を増幅する技術を使い、検査を受けた人がウイルスに感染しているかどうかを調べる。新型コロナは発症の少なくとも2日前から感染性があるとする研究報告があり、厚生労働省は無症状者でも医師が必要と認めれば検査に公的医療保険の適用を認める見解を出した。
だが、PCR検査を巡っては以前から精度を問題視する意見が多かった。検査では、鼻の奥に綿棒を入れて採取した粘液を処理して機器にかけるのが一般的だが、正しく粘液を採取できないと誤った結果を導きかねない。PCR検査で感染者が「陽性」と正しく判定される割合(感度)も、よくても7割程度とされている。
また、検査実施に当たっては、感染した可能性の高い症状のある人を対象に行うべきだと主張する専門家も少なくない。29日の政府専門家会議後に記者会見したメンバーの押谷仁・東北大教授は「(PCR検査によって)症状のない人でどのくらいの感度で(感染が)見つかるかは分かっていない」と述べ、無症状者に検査対象が広がることに慎重な姿勢を見せた。
1回当たりの検査費は1万3500~1万8000円。感染症に詳しい大阪大病院の森井大一医師は「発症前にPCR検査をしても、患者を効率よく見つけられない可能性が高い。無駄に終わるかもしれない検査が、税金や保険料で賄われることは問題だ」と指摘する。【渡辺諒、河内敏康】