唾液による新型コロナウイルスのPCR検査が可能になりました
- 2020年06月02日
タカラバイオ株式会社は、5月1日に発売しました「SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit」(以下、本キット)を用いて、唾液を検体として迅速・簡便に新型コロナウイルスのPCR検査が行えることを確認いたしました。
新型コロナウイルスのPCR検査には、被験者の鼻や喉の奥から検体を採取する方法が行われていますが、被験者に身体的な負荷がかかるうえ、採取時のくしゃみや咳により、採取する医療従事者への感染のリスクが高まるといわれており、被験者負担と感染リスクのより低い方法として、唾液を検体とする方法が求められていました。
本日付で公開された、新型コロナウイルスのPCR検査に関する国立感染症研究所(以下、感染研)の「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル~2020/06/02更新版~」(以下、感染研検体採取・輸送マニュアル)(URL:https://www.niid.go.jp/niid/images/pathol/pdf/2019-nCoV_200602.pdf)に、唾液検体の取扱いについて掲載されましたので、唾液を検体とする本キットによる検査は、行政検査に使用できるだけでなく、公的医療保険の適用対象ともなります。
当社が開発した本キットには、以下の特長があります。
(1)精度・感度:
本キットは、新型コロナウイルスに特異的な遺伝子配列を認識するように設計されており、唾液を検体とした場合でもPCR反応は阻害を受けず、「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」(URL: https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV20200318v2.pdf)に掲載されている、RNA抽出工程を必要とする従来の方法と比較して、同等の精度と感度を持つことが確認されました。(URL:http://catalog.takara-bio.co.jp/com/tech_info_detail.php?mode=3&masterid=M100007508)
(2)簡便性:
本キットは、唾液を検体とした場合でも、安定供給に不安のある、従来のRNA抽出キットを用いる煩雑なRNA抽出工程(約1時間)は不要です。検体に本キットに付属している簡易抽出試薬を混合し、その後95℃で5分間熱処理するだけで、そのままPCR反応に用いることができるため、操作の簡便性が大幅に向上しています。
(3)迅速性:
本キットは、当社の高速PCR技術の採用により、唾液を検体とした場合でも、PCR反応は約50分で行うことができるため、前処理時間を含むトータルの検査時間が、大幅に短縮できます。すなわち、感染研検体採取・輸送マニュアルに掲載された採取方法と本キットを用いれば、医療現場での唾液検体採取から最速1時間あまりで、検査結果を出すことが可能となります。
(4)汎用性:
本キットは、当社のリアルタイムPCR装置(Thermal Cycler Dice® Real Time System シリーズ)のみならず、各社のリアルタイムPCR装置への適合性を確認しています。本キットの簡易抽出試薬との加熱による前処理により、ウイルスが不活化されるため、検査現場の負担も軽減され安定した結果を得ることが期待できます。
(5)コスト:
本キットには、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの検体採取キットを除く、PCR反応に必要な調製済みの全ての試薬が含まれており、反応用のプラスティック消耗品以外はRNA抽出試薬の追加購入も必要ありません。さらに、大量製造体制の確立により、1反応あたりのコストを大幅に低減することができました。
(6)製造供給体制:
本キットを、月産20,000キット(200万反応分)を安定的に供給できる製造体制をすでに整えており、世界的な新型コロナウイルスのPCR検査需要に応えて参ります。
また、検査センターなどの、多数の検査を実施される施設向けに、あらたに本キットの大容量バージョンも発売いたしました。大容量バージョンは、本キット10キット分(1,000反応分)が1キットとなっており、多検体処理に適したプロトコールにあわせ、簡易抽出試薬を増量しています。これにより、多数の検体の反応液調製を一度に処理することができ、検査の時間と労力のさらなる節減が期待されます。
今後とも、当社技術の実用化を通じて、新型コロナウイルスの感染症対策に貢献して参ります。