コロナ専門病院、入院ゼロ…院長ジレンマ「一般医療を制限しているのに」
東京…公立などを転用
大阪…展示場に1000床
新型コロナウイルスの感染再拡大に備えて、すぐに適切な医療を受けられるよう、都市部の自治体は専門病院や臨時医療施設の整備を急いでいる。
東京城東病院(東京都江東区)は、9月30日から軽症・中等症患者を受け入れるコロナ専門病院(50床)となった。同病院にはもともと117床あったが、現在はコロナ患者の入院のみを受け入れ、一般診療は外来に限定している。
同病院は地域医療機能推進機構(JCHO)が運営している。JCHO理事長で、コロナ対策を検討する政府分科会の尾身茂会長から専門病院化の指示があったのは8月下旬。当時は心臓や肝臓の病気、骨折などの患者約90人が入院しており、すべての転院・退院を終えるのに1か月かかったという。
コロナ専門病院を運営するには、人工呼吸器の設置や感染防止策の徹底などのほか、人材確保が不可欠だ。同病院では医師は近隣の大学病院などから、看護師は日本赤十字社などから派遣を受けている。
新規感染者が減ったこともあり、入院患者はこれまで最も多い日で5人。12日現在はゼロとなっている。中馬敦院長は「一般医療を制限し、ずっと病床が空いている状況が果たしていいのかと思う一方で、感染が再拡大した時、即応するには仕方がない」とジレンマを抱えつつも、「今は少しでもコロナ診療の経験を積みたい」と話している。
東京都内では、ほかに、都立広尾病院や、都保健医療公社が運営する豊島病院、荏原病院などが実質的なコロナ専門病院として運用されている。
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大阪では、大阪市が市立十三市民病院をコロナ専門病院(70床)としたほか、府が大型展示場「インテックス大阪」に臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(1000床)を整備した。
同センターの開設を巡っては、今春の第4波で自宅療養者らの死亡が相次いだことを踏まえ、吉村洋文知事が8月下旬、「自宅で亡くなる人を一人でも減らしたい」と表明。10月末までに軽症、無症状用の800床と中等症用の200床の設置工事が完了した。
1床あたり12平方メートルの個室で、中等症病床は応急的な対応ができるように酸素マスクを備える。重症化の予防効果がある「抗体カクテル療法」も受けられる。東京五輪・パラリンピックの選手村で使われたマットレスや枕を再利用し、洗濯機やシャワールームもある。
施設の運営は、公募で選ばれた民間事業者が担い、最大で医師43人、看護師174人を確保した。来年5月末まで開設し、整備費と運営費は計約84億円。
これまでに患者の受け入れ実績はないが、府は病院や宿泊療養用のホテルだけでは対応しきれない「災害級」の感染急拡大時に活用することを想定している。具体的には、軽症、無症状用は宿泊療養施設の使用率50%、中等症用は軽症・中等症病床の使用率70%を目安に稼働の準備を始める。
吉村知事は「本来なら使わずに終わるのが一番いい。いざという時に動かせるようにしたい」と話す。