医療者用コロナ手引を出版 患者と家族の面会手順も
神戸市の基幹病院である市立医療センター中央市民病院(同市中央区)が、医療従事者向けに新型コロナウイルス感染症の診療体制などをまとめたマニュアルを出版した。感染リスクの観点からハードルが高いコロナ患者と家族の直接面会の手順も掲載している。
編集した感染症科の黒田浩一(くろだ・ひろかず)医師(36)は「中等症、重症、回復期と多様な診療体制を示しており、医師だけでなく看護師や病院管理者らも参考にしてほしい」と話す。
同病院は感染症指定医療機関として、国内でコロナ患者が確認された直後の昨年初めから受け入れを開始。しかし同年4月、入院患者と職員計36人が感染した院内クラスター(感染者集団)が発生し、対応の抜本的見直しを迫られた。
一般の救急患者の受け入れを一時的に制限し、院内で感染者と感染疑い患者、非感染者のエリアを区分。全職員に防護服の着脱方法を周知するなど取り組みは多岐にわたり、同年11月には国内で初めて重症者専用の臨時病棟の運用も始めた。
また多くの医療機関は感染リスクが高いとして患者と家族の直接面会を制限しているが、同病院では緩和ケアを重視し終末期や病状が急変した患者との直接面会を許可。試行錯誤の末、蓄積した経験や知識を多くの医療従事者に伝えようと、マニュアルにまとめた。
面会者の既往歴など確認が必要な情報や、防護具、所持品の管理方法などを実践的に説明。コロナ診療では医師以外の職種の人にも活躍の場があるとして、患者を精神的に支える看護師やソーシャルワーカーの仕事にも多くのページを割いた。
コロナ禍で病室に入れず家族をみとれなかったという経験談が報道された影響で、患者と直接会うことができないと思い込む家族も多いという。黒田医師は「通常診療で面会は当たり前のこと。医療従事者はこれまでの知見を踏まえ面会を実現させる方法を模索するべきだ」と強調する。
「神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」はB5判264ページ、3960円。