対象の論文
この論文に着目した理由
変形性股関節症は日常診療で一般的な整形外科疾患であり、治療は保存治療が優先される。股関節の関節注射も保存治療の一つであるが、これまではレントゲン透視装置を用いていたため、膝関節より実施の機会が少なかった。
近年、整形外科領域でもエコーの有用性が広まっており、股関節注射もエコー下で簡便に実施できるようになっている。股関節注射でもステロイドの治療効果を知ることが重要であると考えた。
私の見解
ステロイド関節注射群(局所麻酔・ステロイド)は生活指導群と比較し、6カ月間を通して症状の改善が得られたことから、股関節についても関節注射の有効性が示された。
このほか、ステロイド関節注射群は、局所麻酔注射群と比較し、2-4カ月目に疼痛のさらに大きな改善が得られたことから、ステロイドの混注は亜急性期の強い症状に対してさらに有用であるものと考えられた。
滑膜炎や関節液貯留がある症例では、ステロイド関節注射により除痛が得られたことから、そのような炎症を示す所見がある場合は良い適応であると考えられる。
ステロイド関節注射群で、大動脈弁置換術後の患者に心内膜炎による死亡例があったことから、ステロイド特有の合併症の併発も懸念すべきである。
日常臨床への生かし方
変形性股関節症は外来中に関節注射を実施することが難しかったが、エコーを用いることで簡便に実施することが可能であり、エコー下での股関節注射も今後選択肢の一つとして活かしていきたい手技である。
強い症状のある症例や滑膜炎・関節液貯留のある症例ではステロイドの混注を検討すべきだが、ステロイド特有の合併症のリスクが懸念されるため、症状のみでなく既往歴などを含めその適応を検討すべきである。
福島成欣(ふくしま・まさよし)
国家公務員共済組合連合会虎の門病院脊椎センター長。2005年、福島県立医科大学卒業。日本赤十字社医療センター、横浜労災病院、東京大学医学部附属病院、稲波脊椎・関節病院を経て、2019年から現職。整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医。著書に『当直で役に立つ!シーネ・ギプス固定の基本 虎の巻』(日本医事新報社)。