丸山達也・島根県知事が2日、再稼働に同意を表明した中国電力島根原発(松江市)は、県庁から約8・5キロしか離れていない。全国で唯一、県庁所在地にある原発だ。島根、鳥取両県にまたがる30キロ圏内には計約46万人が暮らすが、原発事故が起きた際の避難計画の周知が不十分という指摘があり、不安の声が根強い。
原発から約23キロ、鳥取県境港市中浜地区の自治会などをまとめる中浜地区各種団体連絡協議会の木村幹夫会長(72)は「避難手順を知らない住民も多い。事故が起きたらパニック状態になるのでは」と懸念する。
同市は弓ケ浜半島の北端に位置する。南側の米子市を経由し、県東部の鳥取市などへの避難が想定されているが、陸路では避難ルートが限られる。木村さんは「複合災害で、少ない避難ルートが使えず孤立する可能性もある。多くの住民が参加し、住民主体の訓練をする必要がある」と訴える。
避難計画では、まず5キロ圏内が先に避難。5~30キロ圏内は状況に応じて段階的に避難するが、津波や地震で道路が破損するなどの複合災害が懸念される。また、事故時に島根県庁に設置される対策本部は避難指示が出た場合、原発から南西28キロの出雲(いずも)合同庁舎(島根県出雲市)に移すことになっているが、合同庁舎が使えなくなるケースは想定されていない。
境港市を含む原発から30キロ圏内の周辺6自治体(島根県出雲、安来(やすぎ)、雲南(うんなん)の各市、鳥取県と同県米子市)は安全協定を結ぶ中国電に対し、立地自治体の島根県、松江市と同様に再稼働など重要な局面で事前了解権を認めるよう繰り返し求めてきた。事故のリスクを負い、避難計画策定の対象なのに、再稼働同意のプロセスからは外されている現状に不満があるからだ。<iframe id="google_ads_iframe_/41213723/PC/article/infeed_naka2_0" tabindex="0" title="3rd party ad content" role="region" src="https://af6626c4c292efbd0e10a6f507acdcba.safeframe.googlesyndication.com/safeframe/1-0-38/html/container.html" name="" width="0" height="97" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" sandbox="allow-forms allow-popups allow-popups-to-escape-sandbox allow-same-origin allow-scripts allow-top-navigation-by-user-activation" data-is-safeframe="true" aria-label="Advertisement" data-google-container-id="6" data-load-complete="true"></iframe> 鳥取県の平井伸治知事は記者会見などでたびたび「周辺地域も事故があれば影響を受ける。事前了解があり得ないというのは強い違和感を持つ」などとけん制。また4月の中国電幹部との面談後、雲南市の石飛厚志市長は「周辺自治体は松江市のような財源がない中で同等の安全対策に取り組まなければならない」と述べ、財政的な恩恵が多い立地自治体の松江市との差に不満を示す一幕もあった。
中国電はあくまで事前了解権は認めていないが、鳥取県に対しては4月、立地自治体と同様に立ち入り調査を可能とし、必要と判断すれば県が米子、境港両市の意見を聞いた上で、原子炉の運転停止を含む措置を要求できるなど権限を強化した協定に改めた。一方、島根側では中国電が県に対処への協力を要請。県が重要な判断をする際は、3市の意見を直接聞く場を設けるほか、中国電に課す核燃料税から3市に出す交付金を充実させるなどしたが、事前了解権を盛り込んだ協定改定は実現していない。【目野創】