入院患者の面会制限、対応分かれる…慣れた病院は一部再開・中小は院内感染に根強い恐怖感
2022年6月21日 (火)配信読売新聞
新型コロナウイルスの新規感染者が減少する中、入院患者の面会制限について、医療機関の対応が分かれている。コロナ対応に慣れた病院が一部再開する一方、中小病院は院内感染を恐れ、踏み切れずにいる。専門家は患者の心身に悪影響を及ぼす懸念から、段階的な緩和を提案したが、現場には戸惑いの声も聞かれる。
伯鳳会東京曳舟病院(東京都墨田区)は、大型連休明けの5月9日、原則中止としてきた面会を再開した。マスクなど基本的な対策だけで「週1回30分」の予約を受け付ける。三浦邦久副院長は「患者は家族と直接話して元気になり、リハビリへの意欲も出てきた」と意義を強調する。
再開できたのは、2年前からコロナ患者を多数受け入れた経験によるところが大きい。「万一、入院患者のコロナ感染が分かっても、感染を広げず対応できる」(三浦副院長)という。
大阪大病院(大阪府吹田市)は、今月9日、面会前のPCR検査などの条件を外した。国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)も20日、15分に限り予約なしの面会を認めた。
家族と会えない悪影響懸念
面会の再開を進めるのは、 看取みと りなど人生の重要な局面ですら家族と会えないことが、患者の心身に悪影響を及ぼす懸念からだ。
国立病院機構東京医療センター(東京都目黒区)の角田晃一・臨床研究センター部長らは、面会禁止の間に院内で看取ったがん患者は、痛み止めの医療用麻薬量が、1回平均で4割増えたと米医学誌に報告した。「面会制限が精神的苦痛を与えたのではないか」とみる。
国立がん研究センター東病院精神腫瘍科の小川朝生科長は「この結果だけで悪影響を明確に示したとはいえないが、面会制限による心身の機能低下など幅広い検証が必要だ」と指摘する。
厚生労働省の助言機関の専門家らは、医療機関での面会を段階的に進めるべきだと提言している。
国は個別の判断に任せる方針
一方、中小病院の多くは慎重な姿勢を崩せずにいる。都内の中小病院幹部は「院内にウイルスが持ち込まれる恐怖感は根強い。世間の緩和ムードと感覚のずれがある」と明かす。
厚労省は、「医療機関で設備や人員など事情が異なる」として、面会再開の基準は示さず、個別の判断に任せる方針だ。
過去に院内感染も経験した久我山病院(東京都世田谷区)は、オンライン面会を原則とし、出産後や手術前後に限り、短時間の面会を模索する。岩下光利院長は、「一病院だけで決めるのは非常に難しい。国には目安だけでも示してほしい」と話している。