現役世代の孤独死防げ スマホで安否確認サービス コロナ禍の不安が背景 「スクランブル」
誰にもみとられずに息を引き取る孤独死。主に高齢者の問題と思われてきたが、スマートフォンのアプリを活用した民間防止サービスへの登録が現役世代にも広がっている。若い人たちが抱く「万が一の時」の不安は周囲に伝わりづらく、行政の支援も不足。新型コロナウイルス禍で人とのつながりが薄れ、孤立感が強まっていることも背景にありそうだ。
紺野功(こんの・いさお)さん(62)は2015年2月、1人暮らしだった弟の由夫(よしお)さん=当時(51)=を亡くした。暖房のない自宅マンションで低体温症となり、発見された時には死後1週間が経過していた。
由夫さんは自宅でIT関連の仕事をしていたが、健康状態が悪化しても周囲に助けを求めない「セルフネグレクト」(自己放任)状態だった。詳しい原因は分からないが、正月に顔を合わせた時にはすっかりやせていたという。
最後に由夫さんに連絡したのは亡くなる3日前。「もっと早く異変に気づければ、弟は助かったかもしれない」。同じような最期を迎える人を減らすため、NPO法人「エンリッチ」を設立。18年11月から若い世代も気軽に使えるLINE(ライン)で、見守りサービスを提供している。
利用者が設定した間隔に従って安否確認のメッセージを自動送信。24時間以内に「OK」とタップされなければ、メッセージや電話で再確認し、応答がない場合は事前に登録された近親者らに連絡する。無料の個人向けサービスには今年5月時点で全国の約5800人が登録しており、30~50代が半数以上を占める。
政府は4月、孤独・孤立問題を巡り、2万人を対象にした初の全国実態調査の結果を公表。高齢者よりも20代や30代の方が孤独を感じている人が多い現状が浮き彫りとなった。新型コロナで外出や交流の機会が減ったことも要因とみられる。
しかし、行政などの見守りは独居の高齢者らが中心で、差し迫った健康上の問題もなく、一見平穏に生きている人の「心の内」をうかがい知るのは難しい。
ホームページ制作などを手がける「テラ合同会社」(東京)の孤独死防止アプリ「リンクプラス」も、安否確認の通知に反応がなければ緊急連絡先にメールが送信される仕組みだ。高橋謙輔(たかはし・けんすけ)代表(36)が知人から「1人暮らしでペットを飼っているが、自分に何かあったら共倒れになってしまうかもしれない」と心配事を聞いたことが開発のきっかけとなった。
現在のダウンロード数は約800件。「家族と疎遠だったり、頼れる人がいなかったりして、毎日自分の無事を確認してくれる相手がいない人もいる」。交流サイト(SNS)との連携など使い勝手を向上させる策を模索中だ。