2018~19年の2年間で約1400人の腎不全患者が、人工透析治療を中止したり開始を見送ったりしたことが、日本医療研究開発機構(AMED)研究班の全国調査で28日までに判明した。研究班はこうした実態を受け、透析をしない高齢腎不全患者向けに、緩和ケアを含めた適切な医療のあり方を示したガイド本「高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法」を刊行した。
中止、見送りの理由については今回調査していない。日本腎臓学会や日本透析医学会など関係4学会の会員を対象に20年にアンケートを実施。病院や透析クリニック、訪問診療医など全国の451施設から回答を得た。
2年間で、透析対象になったにもかかわらず実施を見送った人は917人、治療中に中止した人は492人だった。年齢別では60歳以上で増え始め、特に80歳以上では見送りを選択する患者が多かった。一方で40歳未満でも透析をしない患者が20人いた。
透析をしない人の内訳では、認知症やがん、心臓病を患う人や低栄養、長期に寝たきり状態の人が多かった。
30施設に対する2次調査では、高齢者への透析導入(複数回答可)について「本人・家族の希望があれば行う」(28施設)との回答が最も多く、「認知症などで困難な場合は行わない」(17施設)が続いた。「全例実施する」と回答した施設はなかった。
※人工透析
腎臓の機能が失われると、血液中に老廃物がたまる。これを専用機器で取り除く人工透析は通常、週に3回通院し、1回当たり4時間かけて血液をろ過するため、生活に大きな負担がかかる。途中でやめると数日から数週間で死亡するが、心身の負担のほか、血管が弱い、意識がないなど、物理的な理由で透析をしない患者がいる。東京都内の公立福生病院で、自ら希望して透析をやめて2018年に死亡した女性の遺族が、病院側に損害賠償を求めて提訴したケースが注目された。訴訟は和解し、和解条項で患者への説明や意思確認が不十分だったとされた。