BA・5や制限緩和で拡大 月内ピーク?新派生型懸念 「新型コロナ世界最多」
2022年8月8日 (月)配信共同通信社
国内の新型コロナウイルス流行「第7波」の拡大が止まらず、感染者数は世界保健機関(WHO)の集計で2週連続世界最多になった。専門家は、オミクロン株の派生型「BA・5」の拡大や、行動制限が緩和され人々の活動が活発になったことなどを要因に挙げる。ピークは8月中との見方が多いが、新たな派生型の登場で減少の遅れや次の波の懸念も出ている。
▽1・3倍
WHOが3日付で公表した集計では、7月25~31日の1週間に報告された感染者数は日本が約138万人で、2週続けて世界で最も多かった。WHOによると、いくつかの国では政策の変更で検査の件数が減り、報告される感染者数も少なくなっていることに注意が必要だが、統計上、比較的落ち着いている欧米とは対照的に、日本の増加が顕著なのは間違いない。
要因として専門家が指摘するのは、BA・5の流行だ。過去の感染やワクチンによる免疫をかいくぐる能力が高まっているとされ、国立感染症研究所などの試算では、国内で今春、流行した別の派生型のBA・2より約1・3倍広がりやすい。日本では5月半ばに初めて感染者が確認されたが、既に国内で流行するウイルスのほぼ全てを占めると推計されている。
▽活発な活動
3月22日に「まん延防止等重点措置」を解除して以降、飲食店の営業時間短縮やイベントの人数制限といった措置を国が実施しておらず、人々の活動が活発な状況も要因の一つと考えられる。厚生労働省に助言する専門家組織の分析では、夜に繁華街に出歩く人の数は、7月半ばまで多くの地域で増加傾向だった。その後減少したが、7月末には東京や大阪などで再び増えている。20~50代では「事業所」や「飲食店」での感染例が多い。
新潟大の斎藤玲子(さいとう・れいこ)教授(公衆衛生学)は「韓国や台湾も厳しい行動制限を一気に解除した後に感染者が激増した。日本でも同じことが起きていると思う」と指摘。「過去に感染した人の少なさ」も影響していると見る。
米疾病対策センター(CDC)は2月までに米国の人口の約6割が感染したと推計。一方、日本で報告された感染者数は人口の1割程度だ。ワクチンを接種し、感染した経験もある人は、結果的に感染を防ぐ効果が一層強まっているとの研究結果が国内外で出ている。日本は感染による免疫を持つ人が少ない上に、3回目のワクチンを接種していない人が4割程度いるため、感染しやすい人が多いと考えられる。
▽次の波
第7波はいつ収まるのか。大きな流行を経験した韓国や台湾は1カ月ほどでピークを越えた。日本も直近では感染者数の伸びが鈍化しており、「8月がヤマ場になる」と推測する専門家は多い。
ただ、国内ではBA・5よりさらに感染スピードが速いとされる派生型「BA・2・75」が広がり始めている。厚労省の専門家組織の脇田隆字(わきた・たかじ)座長は3日の会合後の記者会見で「BA・2・75への置き換わりが起きると、感染者の減少が遅くなる可能性がある。重症者、死者の増加につながってしまう」と指摘した。
斎藤教授もこの派生型の影響を懸念。「今の流行が収まりきって10月ごろに次の波が来るのか、間髪入れずに9月ごろに来るのかは予測できない」と話す。