「第7波」綱渡りの救急医療 「イライラせずに」語りかけた思いは
新型コロナウイルスの感染「第7波」に伴い、筑後地区の救急医療が逼迫(ひっぱく)している。軽症でも体調不良を訴える患者の対応に追われるほか、医師や看護師が感染して人員不足に陥るケースも。現場では緊急でない検査入院の予定延期などで医療提供体制を維持するが、「綱渡りの状態」と危機感を強める。
「第6波までと比べ、救急医療はかつてないほど厳しくなっている」
12日、久留米市役所で記者会見した久留米大病院(同市旭町)の高須修高度救命救急センター長は険しい表情を見せた。
爆発的な感染拡大が続く「第7波」では当初、10代を中心とした若年層の感染割合が高かった。その後、家庭内で感染が広がり、重症化リスクの高い70代以上の感染者も増えた。7月下旬以降、市内の医療機関では病床使用率が70~80%台で推移し、久留米市保健所が集計する感染者数も8月13日までに過去最多を3回更新している。
久留米大病院では医師や看護師が陽性や濃厚接触者となり、一時的に100人以上が出勤停止となった。病棟の一部を閉鎖して人員配置を換え、緊急性の低い手術や検査入院を延期して対応している。
高須センター長は「病床使用率の数字を見る以上に、現場は逼迫する。このままでは救急搬送の受け入れに深刻な影響が出かねない」と懸念する。
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県南の救急医療を支える聖マリア病院(久留米市津福本町)も、発熱や咽頭痛などで感染が疑われる患者が殺到する。市内の診療所や発熱外来が閉まる休日とその前夜には、特設テントを設営。患者の受付窓口を増やしている。
中には勤務先に提出するための検査結果を求めて訪れる人もいるという。事務担当者は「症状があれば不安になる気持ちは分かるが、体調をしっかり見極め、来院してほしい」と呼びかける。
久留米市保健所も、軽症者には平日昼の受診を勧めるなど、できる限り医療に負担のかからない配慮を求めている。
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診療の待ち時間にストレスがたまり、言葉が荒くなる受診者もいる。姫野病院(広川町新代)はツイッターで冷静な対応をお願いする。
診察はまず駐車場で待機し、病院に連絡した後、順番が来れば問診を受ける。病院には1日100~150人が発熱外来に訪れるため、車内で最大2時間ほど待つ人もいるという。
≪車内が暑くなってイライラされている方が増えています。エアコンをつけて快適に待ってください≫
7月28日には、こんな投稿をした。感染の不安に駆られる人々を守ろうと、医療従事者も必死の思いだ。投稿はこう締めた。
≪医師、看護師、病院職員は発熱者並みに汗をかいて走っています。電話などイライラせずに、優しく話してください。みんな心はあります≫
(山下真、軸丸雅訓)