検査拡充、無症状者にも? 第2波対策、分かれる意見 PCR検査
緊急事態宣言が全面解除された。人の往来が活発化し始め、新型コロナウイルス感染の第2波への懸念が高まる。感染爆発を防ぐ鍵は陽性かどうかを判定するPCR検査。検査数の少なさが批判された政府は態勢拡充を進めているが、無症状者も対象とするか、どう検査していくかは専門家の間でも意見が分かれる。
▽積極的
新型コロナの特徴の一つは、発症前でも感染の可能性があること。政府は外出自粛や休業要請で人の流れを止めて「第1波」を抑えたが、群星(むりぶし)沖縄臨床研修センターの徳田安春(とくだ・やすはる)センター長は「社会経済活動への影響が大き過ぎる。感染者が自覚なく歩き回るのを防ぐには、積極的に検査して隔離することが最重要」と強調する。陽性と確認されないと、濃厚接触者を調べるクラスター(感染者集団)対策にもつながらない。
ただ、検査は万能ではなく、感染していないのに陽性となる「偽陽性」や、反対の「偽陰性」のリスクはつきまとう。徳田氏は「経済活動を止めるより、偽陽性でも隔離する方がメリットは大きい。偽陰性者の見逃しを減らすため検査を繰り返す方法もある」とみる。
第2波の兆候をつかむには、発熱や息苦しさといった症状が出た全員の迅速な検査が欠かせない。徳田氏は「流行期には病院や高齢者施設などリスクが高い人が集まる場所に限り、無症状者や陰性となった人も定期的に検査してはどうか」と提案する。ドイツや韓国など、封じ込めに成功した国も膨大な検査と隔離を積極的に実施している。
▽懐疑的
一方、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一(にしむら・ひでかず)ウイルスセンター長は「無症状で感染を広げたケースが実際にどれぐらいあるのかはっきりしない。ゼロリスクを求め、大量に検査し続けるほど資機材に余裕はない」と話す。不安解消のために感染可能性が高くない人にまで検査を広げようとの声には懐疑的だ。
検査用の試薬は国内生産が増えたが、安定確保の見通しは立っていない。機器を扱う人材も「すぐに増員できない。命がかかった検査であり、資質がある人をちゃんと教育しないと」と話す。
「陰性でも感染していないことの証明にはならないので、状況が落ち着いている現状で検査を拡大するのは試薬の浪費。流行期も、無症状の人に検査をして半ば強制的に隔離するのは人権上問題があるのではないか」と指摘する。
短時間で判定可能な抗原検査も薬事承認されたが精度は劣り、陰性の場合はPCR検査による確認が必要だ。「結局は二度手間。現状では第2波に備えて試薬を節約しながら、態勢を整えるしかない」
厚生労働省によると、1日のPCR検査数は4月下旬以降、平日は4千~5千件の日が比較的多い一方、1万件超の日もあった。5月19日時点で約2万4千件が可能としている。
東海大の金谷泰宏(かなたに・やすひろ)教授(公衆衛生学)は「国は症状が出た人を迅速に検査して早期治療につなげる方向で進めている。市中の感染率が低い現状では、無症状者の検査をむやみに増やすのは無駄ではないか」とみている。