【島根】産後ケア 利用急増
助産師運営「相談室」が人気
松江市で、出産直後の母親が心身のケアや育児指導を受ける「産後ケア」の利用が急増している。コロナ禍で孤立する母親の要望にマッチしたとみられ、今年4~10月の利用回数は昨年度1年間の19倍になった。市議会11月定例会では、関連事業費640万円を含む補正予算案が可決され、市は支援を強化する。(阪悠樹)
市が産後ケア事業を始めたのは2019年10月。生後4か月未満の乳児を持つ母親が対象で、7回を限度に利用できる。助産師が家を訪ねる「訪問型」と、母親が病院などへ足を運ぶ「デイサービス型」があり、利用額は課税額によるが、最高で1回2000円。母親からは「外でリフレッシュしたい」との声があり、大半がデイサービス型の利用という。
当初、デイサービス型の受け入れは、松江赤十字病院と市立病院のみでハードルが高かったためか、初年度の利用は4回(3組)、昨年度は11回(2組)にとどまっていた。
一方、市子育て支援センターには、母親から「疲労がたまる中、どう子育てしていいかわからない」「赤ちゃんの体重が増えない」「授乳がつらい」との悩みが寄せられていた。これを受け、市は今年4月、助産師が1人で営む「Aya母乳育児相談室」(松江市乃木福富町)を受け入れ先に加えたところ、利用が急増。デイサービス型は4~10月の7か月で188回(40組)になった。
同相談室は、助産師の坂本亜也子さん(47)が運営。「母乳で育てたい」という母親の願いをかなえるため、マッサージや育児相談を行っている。
坂本さんによると、風呂の入れ方から寝かしつけまで、母親の不安はつきないという。特に多いのは「私が抱いた時だけ、この子が泣く」といった悩みだ。「赤ちゃんはママが分かる。あなただから甘えている」と話すと、安心した母親が、せきを切ったように泣き出すことも珍しくないという。
母乳が出やすく栄養価の高いランチを用意したり、利用者を集めた昼食会を開いたりして、くつろげるように工夫をこらしている。
利用者の一人で、8月に第1子を出産した女性は「子どもの成長を喜んでくれる温かな雰囲気があり、子育てって楽しいなと思えた」と語る。ほかの母親からも「コロナ禍でママ友ができないのでうれしい」「同じ悩みを共有できた」と喜ばれている。
坂本さんは「しんどい思いをしているママはもっといるはず。官民一体で支える体制を整えるべきだ」と話す。市子育て支援センターの峯彰子センター長も、「第1子の育児でつまずくと、以後の出産を諦める恐れもあり、少子高齢化に直結する。市としても支援体制を強化していきたい」としている。