認知症新薬の承認見送り 有効性判断「困難」 厚労省部会、継続審議
厚生労働省の専門部会は22日、認知症のアルツハイマー病に対する新薬として製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発した「アデュカヌマブ」の製造販売を承認するかどうか審議し、この日の承認を見送った。現時点のデータからは有効性を明確に判断するのが「困難」とした。
今後、追加データが提出されれば有効性や安全性を再検討し、その結果に応じて「再度審議する必要がある」とした。継続審議の位置付けだが、追加の臨床試験(治験)のデータがまとまるのに、数年かかる可能性がある。
エーザイとバイオジェンは「追加データについて前向きに協議していく」とするコメントを出した。
バイオジェンの日本法人が2020年12月、厚労省に承認を申請していた。アデュカヌマブは患者の脳内に蓄積して神経細胞を壊すタンパク質「アミロイドベータ」を減らし、症状の進行抑制を狙う初の治療薬として期待されている。
専門部会は、承認申請の根拠となった2種類の治験の結果に一貫性がなく、アミロイドベータが減ることが症状の進行抑制につながるのか評価が確立していないとして、有効性の判断は困難とした。また、安全性では、脳の浮腫や出血といった副作用がみられた点を重視し、引き続き審議すべきと判断した。
米食品医薬品局(FDA)は今年6月、販売後に検証試験で効果を確認する条件で承認した。FDAの外部有識者委員会では有効性を疑う意見が多数を占め、承認後には批判が噴出、委員3人が抗議して辞任した。
一方、欧州医薬品庁(EMA)は12月、「アミロイドベータ減少と症状改善の関連性が確立されていない」として承認しないと勧告した。
※アデュカヌマブ
脳の神経細胞を壊し、アルツハイマー病の原因とされる脳内のタンパク質「アミロイドベータ」とくっつき除去する抗体医薬。スイスの創薬ベンチャーが開発し、2010年代から日本の製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同で製品化を目指してきた。アルツハイマー病の前段階である軽度認知障害の人と早期アルツハイマー病患者を対象に月1回、1年半にわたって点滴で投与する。2種類の大規模臨床試験では、アミロイドベータを59~71%減少させ、一方の高用量のグループでは認知機能の低下を22%抑制する効果が得られたとしている。米食品医薬品局は今年6月に販売後の検証試験を条件として承認、欧州医薬品庁は12月に承認しない勧告を出した。