「赤い蠟燭と人魚」。
子どもの頃読んだこの童話の、挿し絵のイメージがじわり、とよみがえってきました。
確かそれは、白と黒の版画のような絵。
ただ、人魚の娘の描く蠟燭の模様と、そして人魚の代わりにのこされた蠟燭だけが、赤。
海の底を描いた模様が美しくて、でも人魚の娘が連れ去られたあと灯る蠟燭の赤が悲しくて。
岡埜葡萄さんの朗読によって浮かんだ情景は、胸の底に沈んでいって、じわりと染みるように広がりました。
葡萄さんの朗読を体験してから、ラジオドラマなども楽しむようになりました。
ですが、朗読のセリフの間のト書きが、わたしはなんとも好きなのです。
小川未明のト書きの語り口、「…でありました」が、静かなリズムを生んで物語に一層引き込まれました。
海と人魚と貝がらをテーマに、詩と物語で構成されたプログラムの静かな統一感が、美しいひとときでした。
そして、挿入されるリコーダーの音楽で、頭の中の映像が鮮やかになる感じが。
武藤哲也さんと岡埜葡萄さん、このおふたりならではの、充実したプログラムでした。
第一部は、武藤さんによる「春」がテーマのバロック音楽。軽やかで、小鳥を思わせる曲が印象的!
大麦小麦でのおふたりのコンサートは、今回で4回目でした。常に足を運んでくれる方も、初めて体験された方も。たくさんの方に来ていただき、ありがとうございました!なんだか自分が豊かになった気持ち、とお帰りになった方もいましたよ。同感です!
毎回、想いを込めて丁寧に魅せてくださるおふたりの公演。いつか、怪談をテーマにしたプログラムも見てみたいわたしです。こ、怖いけれどね…。
(M)