山形自動車道の笹谷インターで降り、国道を青根温泉に向かっていると、やがて道の両側に飲食店がちらほらみかける地区に入った。(あ、あそこの蕎麦ですませるか・・・)横目で店を物色しているうちに、「手打ち十割そば『ゆっく里』」と書かれた看板をみつけてスピードをゆるめた。今日は二食付きの宿なので、軽めにしとくほうが無難だ。なんとも末枯れた風体の店である。旨い蕎麦を食わせてくれれば、まあ、それでいいのだが . . . 本文を読む
いわせてもらえば、剣術とおなじように酒呑みにも流派がいろいろある。(と思う)あてが、刺身や焼鳥などがんじがらめに居酒屋メニューだけに縛られている一刀流な奴もいれば、食堂単品メニューでも焼き鯖定食でもオッケー、なんなら梅干だけでもいいという自在な陰流っぽい、型にはまらぬヤツもいるのだ。坂東橋駅にやってきたのは、しばらく前に友人からもらったショートメールのせいだ . . . 本文を読む
ここだけの話、誰もいない温泉の露天風呂では鶯の鳴き真似をしてしまう。鹿児島の吹上温泉の露天風呂に朝方入っていたとき、周りの森の中で鶯の鳴き声がして、一人きりだったのをいいことに口笛で鳴き真似をしてみたら、これがまあジツにうまくいった。遠くに聞こえた鶯のヤツが仲間と勘違いしてだんだん近づいてきたのだった。初めての挑戦だったが、それ以来鶯の鳴き声がすると思いだして秘かにやるのである . . . 本文を読む
ひとり旅、独り呑み、一人カラオケなど「個」で楽しむのも漸く認知されてきたようであるが、一人焼肉はまだまだちょいとハードルが高い。カウンター席とか入れ込み卓などを設置している店が少なく、四人卓とか六人卓が多いのでランチタイムなどには、よほどの大型店舗でなければ一人客は敬遠される。灼熱の八月・・・茹だるような日々の合間に、突然といった感じで妙に秋めいた涼しい週末が訪れた。この涼しさならば鉄板だろうが炭火だろうが苦にならないな . . . 本文を読む
昔から、夏は暑いと相場は決まっている。でも青天井みたいな暑さは厭だな。熱中症でジワジワ淘汰される・・・ような、そんなヤバい炎暑の夏がいま全国に広がって、連日、まさに焦熱地獄の日々が続いている。喧しい蝉もあまりの暑さにくたばったのか、めずらしく静かな夏だ。先週の日曜、岐阜県の郡上八幡が猛暑最高地点だった。わたしが旅先で一番暑かったと記憶しているのもそこだ。熱い温泉が好きなほうなのでけっこう暑さには強い。そんなわたしでも、郡上踊りの彼の地では汗腺が突然崩壊したみたいに、ひと夏分とも思える大量の汗をたった一時間でかいてしまった。頭髪のあらゆる毛根から、額から頬っぺたから首筋から汗が噴き出しまくって、死ぬかとおもった . . . 本文を読む
五月中旬くらいから、海の体調が悪くなった。あのきつい目力がなんと柔和に変わり食が細くなってきて、魔女猫とはいえども歳も歳だし心配である。いつものように成田に参詣して祈願するか・・・。ただ成田まで行くと一日仕事になってしまう。そういえば東京の門前仲町には成田山新勝寺の東京別院として深川不動があった。横浜にもありそうだ。調べたら野毛にあった。傾斜がゆるやかな西参道を選んだ。カレーのスパイシーな香りが漂うのは、本格カレーを供するどこかの飲食店の換気扇のせいだろうか . . . 本文を読む
盗人宿を見張る火盗改めの密偵<相模の彦十>よろしく、わたしもたまに無性に蕎麦屋に腰を落ち着けて呑みたくなる。あるいは休日の昼どきに、蕎麦前で海苔とか板わさで燗酒を二合くらいやってからの盛りそばなんてのもたまらない。ただ昼でないときには、どうしても酒に煙草はセットになるのだが蕎麦屋の多くが軒並み禁煙になって久しく、煙草が吸えるところを探すのは容易ではないのだ . . . 本文を読む
車を運転するのも好きだが、歩きまわるのも大好きである。熱中症対策も兼ねて、長時間歩くときには水分補給は欠かせない。コンビニか、路上に置いてある自販機で冷えたミネラルウォーターかお茶を買うことが多い。先日、歩いていると、ある自販機で思わず目が釘付けになった。(なんと、安い・・・・・・)きっと売値は設置者の自由裁量なのだろうが、それにしても安い。水の90円もだが「伊右衛門」が100円とは滅茶安な良心的な値段設定だ . . . 本文を読む
急に思い立ち、九年ぶりの去年十月から再読を始めた「真田太平記」全十二巻もついに二度目の完読を終え、ようやく軛(くびき)から解き放たれた。いったんここで時代小説から離れ、気分を一新しようと脚本を読むことにした。小説と違って脚本は慣れてないとかなり読みづらい。上巻の予約者数に比べて、中巻と下巻のそれは激減する。「やすらぎの郷(さと)」は倉本聰が<大人のための帯ドラマ>として書かれた脚本である。残念ながら真昼の時間の帯ドラマだからわたしも観た機会は数度しかなく、脚本を読むのを楽しみにしていたのだ . . . 本文を読む
「うわっ、この牡蠣フライうまい!」思わず声に出してしまう。この時期、牡蠣がとにかくうまい。生もいいが、初めての店ではフライが安心である。出先で夕方になり軽く呑んで帰ろうと探索していたら、駅に近い讃岐うどんの綺麗な店をみつけた。夜は呑めるようである。念のため、喫煙できるかどうかを確認してから入った。牡蠣フライは六、七十点ぐらいでも相当にうまいものだ。ここのヤツは満点に近い。とにかく、ぶ厚い衣はいけない、薄い衣、それこそが最高なのだ . . . 本文を読む