温泉クンの旅日記

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続・太田焼きそば

2016-04-06 | 食べある記
  <続・太田焼きそば>

 太田は「焼きそばの街」として秋田の横手、静岡の富士宮と「三国同麺」を結成したほど<焼きそば>が売りなのだが、肝心の「太田焼きそば」には、横手と富士宮と違い統一された特徴も定義もない。麺も細いの太いの、ソースも甘いの辛いの、とにかくなんでもあり状態、要は世話人みたいのがいないから「これが太田焼きそば」だというのがみえてこないのだ。

 二回目の太田焼きそばには創業四十年を超える老舗の「清水屋本店」を選んだ。



 入ると店のレジあたりに客が固まっていたが、店内のカウンター席とテーブル席には誰もいなかった。すべて卓の上とカウンターに灰皿が置いてあるのが嬉しい限り。





 店の廻りは団地と住宅街だし、曜日と時間帯のせいか、どうやらあらかじめ電話で注文して持ち帰る客が多いのだろう。

 メニューをざっとみて焼きそばの小を頼むことに腹具合で決めて、カウンター内に通した。なしにろ、さらしな蕎麦の大盛りと田舎蕎麦を食べたばかりなのだ。
 でもせっかく来て「小」だけではなにかなと思い、最近食べて意外に旨かった佐原のたい焼きを思いだしついつい一個だけ追加注文した。

「お待たせいたしました。どうぞ、こちらが焼きそばの小になります」
 皿を置きながら腰の極めて低い店主が言う。ついでのように「太田焼きそばマップ」を置いていってくれた。
「あ、はい、どうも」



 えっ、これで小かよ。ここは山形か、と突っ込みを入れたくなる。どうみても『並』でしょうとわたしは驚く。
「お客様はどちらからいらしたのでしょうか」と丁寧に訊かれて、思わずつい正直に「横浜からです」と答えたとき、店主の眼がキラリと光ったのに気がついた。なんかしら、まずい気配。



 細麺をラードで炒めたところが、いつも食べ慣れている中華の焼きそばの味わいに似ていてわたしの好みの味だ。具はキャベツに青海苔と紅ショウガとシンプルなのも問題ない。ただ量だけが問題だ。
 焼きそばを残したら「気配り命」みたいな店主なので、「(都会のお方の)おクチに合いませんでしたでしょうか」と、低姿勢、上目ずかいに言われるのだけはなにがなんでも避けたい。
 必死で食べた。
 水で流しこんでいてお代りをしようとしたら、店主が魔法のように現れて「気がつきませんで」といいながら冷水を足してくれる。



 まずいなあ、大いにまずい。横浜からの客をしっかり横目でチェックしてるじゃないか。
最初の辺は味わっていたが、とにかく猫が舐めたように食べきることだけを目指し、そしてミッションを完遂したのである。ああ、しんど。満腹じゃあ。
「たい焼き、お待たせしました」



(げっ! バリバリ養殖ものやんけ。しかも本体の周りのビラビラだけでも喰いごたえありそう!)
「昔ながらのたい焼きですので・・・皮の生地もまるでホットケーキのようだと言われますんで」
 都会の方のお口には合わないかも知れませんが、というセリフを飲みこんだように思えた。
(・・・・・・・)
 たい焼きの皮がたしかにホットケーキのようにぶ厚くて閉口したが、甘党でないわたしには中に詰まった餡子もとてつもない量だった。



 たった一匹だけど涙目でなんとか喰いきった。

 店主夫婦に丁寧に見送られて店をでると、東武桐生線の線路を渡って太田記念病院の広い駐車場に歩く。店の駐車場がいっぱいだったので、図々しくもスペースをちゃっかり拝借したのである。
 腹が膨れすぎて苦しい。ああ、一刻も早く温泉に浸かって汗ダラダラ流してとにかく楽になりたい。


   →「太田焼きそば」の記事はこちら
   →「藪塚温泉(1)」の記事はこちら

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