夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

花がたみ 伝寺崎廣業筆 その29

2014-07-08 06:13:21 | 掛け軸
最近は資金不足でいい作品が買われていくのを横目で眺めるだけ・・、円山応挙の「鯉」(当然ながら真作、久方ぶりに真作を見ました)、渡辺玄對の「孔子像」、黒田稲皐の「桜下馬之図」・・、玄人好みの作品ばかり。

資金不足では致し方ない・・、作品処分で資金準備

さて本日の作品・・、本作品を観たときにすぐに思い浮かぶのは上村松園の代表作の「花がたみ」という作品でしょう。



このような名品と真贋さえも不確かな本作品と見比べるのはおこがましいとは思いますが、そこはそれ知識の吸収ということでご容赦願います。

花がたみ 伝寺崎廣業筆 その29
絹本着色軸装 軸先鹿骨 合箱入
全体サイズ:縦1710*横575 画サイズ:縦960*横418



落款は「二本廣業」の書体であり、明治35年頃から42年頃までの7年くらいの間の落款の書体とされています。本作品の印章は以前に投稿した「鯉」と同じ印章です。



そもそも「花筐(花がたみ)」というのは何かというと、下記の説明のとおりですが、恋焦がれて精神状態が不安定になった女性を描いた作品です。



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能楽 花筺(はながたみ)
あらすじ:越前国味真野におられた男大迹皇子(応神天皇の五世の孫)は、皇位を継承されることとなったのを機に、召し使っていた照日の前にお暇を出された。

その際、照日の前に御文と御花筐(花摘みに用いる籠 花は桜)を賜ったので、照日の前はそれを抱いて故郷に帰った。扇には別れの文にあった歌「忘るなよ程は 雲居になりぬとも 空行く月のめぐり逢ふまで」が記されている。

その後のある日、継體天皇となられた皇子が行幸されるのを知った照日の前は、お慕いした余りに心が乱れて侍女とともに都へ向かった。天皇が紅葉狩りに出かけたとき、その途中でその行幸に行き逢い、御文と御花筐を持ってその前に進む。



照日の前は、それが君の御花筐であることを告げ、恋慕の情を述べる。帝は花筐によって女が照日の前であることを知り、一緒に伴って還幸される。

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話としてはハッピーエンドらしいです。

上村松園は精神状態がおかしな女性をどう描くか、だいぶ悩んだそうです。

焦点の定まらない視線・・・。



手の表実にはだいぶこだわったようですが、いみじくも本作品は左手と右手の違いはあれ、手によって狂態を表現しています。




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上村松園の「花がたみ」(花筐は竹で編んだ花籠)は第九回文展出品作で、大正四年の制作である。照日前の能衣裳の美しさにともない、狂人の表情を示す能面の凄美さは、何にたとえんものがないほど、息づまる雰囲気をそこに拡げています。

松園は能面「十寸髪」(ますがみ)を狂女の顔の参考にしたという。いとしい人にあいたくてあいたくてあいたくて物狂いになった女を、女性画家の上村松園が描きました。

魂が抜けてしまうほどに恋しがることを「あくがれる」といいます。この絵はそんなあくがれいづる女の恋慕を表現しています。髪は結髪されずに後ろに長く垂らした垂髪、灰白の小袖に茜色の長袴、その上に緑青の単(ひとえ)、単には鬱金色(うこんいろ)の花菱が並んでいる。その上に錆桔梗(さびききょう)、藤色、薄色、下二領を白にした紫の薄様の五衣を重ね、珊瑚の文様が散らされた赤白橡(あかしろつるばみ)の表着と萩と女郎花の文様が白く抜かれた白緑(びゃくろく)の唐衣を羽織っている。

十二単のはずなのにどの衣も厚みなく左肩から崩れ落ちている。右手には白菊が盛られた花籠を提げ、その蔓には手紙が結ばれている。

切れ長の目の中の瞳は、少し中央に寄り、光まで吸い取ってしまうような空虚な気配を漂わし、この世でない場所へ焦点を結んでいるようだ。少し開かれた唇は、当初の微笑みに、嘆き、怒りといった他の感情が加わり、せめぎ合い、引きつれ歪み、諦めて弛緩している。彼女の心が尋常ではないことが画面全体から伝わってくる。

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真贋については慎重に判断しなくてはいけません。



着物の表現は見事・・・。



贋作ならもととなった作品があるはずなのですが、寺崎廣業の作品に「花がたみ」の作品に関する記述はみたたりません


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