整理しながら、過去に蒐集した作品は必ず見返します。収納したままではなく常に作品を見直すようにしています。ときには気が付かなかった点などを再調査するのも蒐集には必ず必要なことですね。
さて掛け軸はよほど保管状態がよくないと、いつかは改装の必要のあるものです。当方にて入手した作品でも、その段階でメンテの必要なものが2割ほどあります。
そのような作品がある程度数がまとまった時点でメンテしていますが、今回も数点を改修したので紹介します。
夏の海岸 中村左洲筆
絹本水墨淡彩軸装 軸先骨 合箱
全体サイズ:縦1875*横532 画サイズ:縦1132*横355
2024年2月改装:三段表装 25,000円 タトウ紙新調 1,000円
中村左洲と言えば「鯛」の作品で有名ですが、意外にも美人画とか風景画においても佳作を遺しています。
中村左洲の風景画は当時の漁港の様子をよく伝えている優品が多いのですが、知名度が低いせいか、意外に粗末に扱われている作品が多くようで、本ブログに紹介されている作品においても改装している作品が他にもいくつかあります。これからは中村左洲の作品は再評価される機会が訪れるでしょう。
次は平福穂庵の作品ですが、平福穂庵は数多くの瀑布図を描いています。これは多くの画家が円山応挙の瀑布図に影響を受けていたことと、依頼主においても夏に涼しげな作品を所望したことによるのでしょう。
瀑布図 その2 平福穂庵筆 明治8年(1875年)頃
紙本水墨軸装 軸先木製 合箱
全体サイズ:横655*縦1940 画サイズ:横524*縦1300
*分類第2期:職業画家をめざして(明治1年~10年)
2024年2月改装:表装 30,000円 タトウ紙新調 1,000円
平福穂庵が得意とした荒々しい筆致と瀧という画題がマッチングしています。
次は将来を嘱望されながら、放浪の画家として過ごした西郷孤月・・。
水墨山水図 西郷孤月筆
絹本水墨軸装 軸先骨 合箱
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦1120*横415
2024年2月改装:天地改装 10,000円 タトウ紙・箱新調 2,000円
孤月は落款といっしょに年代を入れることがないので推定するのは難しいのですが、おそらく明治30年代中頃の作品と思われます。
一般的には、風景の中に人物を小さく入れることによって背景の広大さを表現しますが、孤月の場合は人物の孤独感のようなものが前面に伝わってくる作品を描きます。
そのような琴線に触れるものを描くのが、横山大観や菱田春草にはない魅力となっています。
この作品は本ブログでも検索されることの多い作品となっています。
次は山元櫻月の作品です。
瑞祥 山元櫻月筆
絹本着色軸装 軸先欠損(後日取付) 共箱(初号春汀銘)
全体サイズ:横490*縦2200 画サイズ:横1300*横357
2024年2月改装:三段表装 染み抜き 30,000円 タトウ紙新調 1,000円
おめでたい図柄・・・。
山元櫻月は富士を題材とした作品で著名ですが、このような作品も描くのは新鮮な感じします。
次は多作な寺崎廣業の作品の中では佳作な作品。
春景山水 その2 寺崎廣業筆 明治末年(1912年)頃
絹本着色軸装 軸先象牙 共箱
全体サイズ:縦2020*横615 画サイズ:縦1175*横420
2024年2月改装:三段表装(締め直し) 30,000円 タトウ紙新調 1,000円
晩年になって主に描くようになった山岳を題材にした作品のはしり・・。
近代画に脱却しようとする兆しがうかがえます。
なんだかんだ言ってもうまい・・・。
人気のなくなった掛軸。それに伴って扱いも乱雑となり、痛んでいる作品が多くなっているように思います。佳作を選んで当方では改修を心がけています。当方に数多くあった痛んだ作品ですが、そろそろメンテする作品も先が見えてきました、・・・とはいえまだ数十の作品があります。改装すると見違えるほど作品がきれいになりますよ。