夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

虎図 佐伯岸駒筆

2012-05-12 10:20:53 | 掛け軸
建設業の決算の発表が相次いでいますが、建設業においても商いの基本は利益であるということを忘れてはいけません。受注や売り上げを目指す人が多いですが、本来は利益額です。

100億の仕事をして利益が1億と10億の仕事をして利益が1億ではどちらがいいのか・・。仕事の意義や将来性を除くと自明の理です。

10億の仕事を2つか3つしたほうがパワー的に有利です。赤字は論外です。赤字になるのか黒字になるのかの社会的な状況・・、基本は物価ですが、それを読み誤らないようにして原価の把握をしっかり対応すればいいだけです。

建設業はひとつの案件の額が多いだけに、商いの基本をなおざりにしました。安値受注がどれだけのダメージを与えるのか・・、物価上昇機運の状況下でこれからがたいへんです。

ただでさえサバイバルの時代です。震災復興で一息付いている思われるかもしれませんが、各社が青息吐息の状態です。談合の体質が受注と利益を判断する人材を縦割りにしてきたといえます。営業と技術とが縦割りのままではなく、掌握するトップが正確な判断ができるようでなくてはいけません。

これからは企業の正当な利益が得られるように受注交渉をしなくていけません。しかも他に負けないという価値を付加したものでです。そこには知識と技術、そして感性が営業時点で必要です。そのために何をすれば良いのかを真剣に考えなくてはなりません。時には個々の能力を超えたものです。

さて、骨董の趣味でもそうです。いかに趣味とはいえ効率的に財源を使わないとただの道楽になります。100万で買って110万で売るより、1万で買って10万で売ったほうがリスクも少なく効率がいいのです。価値基準をしっかりもって本物を見極めないといけません。そのためには大いに知識と感性(技術)を深めることです。仕事も趣味も同じこと・・、根底にあるのは知識と技術と感性に裏づけられた強い信念です。

本日は「虎」の絵についてです。

江戸期に虎の絵というと佐伯岸駒をはじめとする岸一派が有名です。近代では大橋翆石が有名です。

虎図 佐伯岸駒筆
絹装軸 双幅絹本 着色箱入
全体サイズ:縦*横 画サイズ:横304*縦930



岸駒の虎の絵は真贋を含めてかなりの作品数が市場に出回ってします。ただ、真作で着色のものはほとんどありません。そういう意味では淡彩ながら本作品は貴重な作品ということになります。



佐伯岸駒は以前に「鐘馗図」を投稿したことがありますので、参考にして下さい。



虎の絵は好きで少しずつ増えています。ものを言わず、しっかりとした信念を持ったような表情がいいですね。




口先上手な人間に睨みを利かしているような気がします。




落款と印章は下の写真の通りです。



佐伯岸駒:宝暦6年生まれ、天保9年没(1756年~1838年)。享年90歳。本姓は佐伯であったが、岸氏に改め名を駒といったので、音読が通用している。字は賁然。号は同功館、可観堂。金沢に生まれ、京都に出て有栖川宮の侍臣となって、天保7年に蔵人所衆、従五位下、越前守に任官する。定まった師はないが沈南蘋派や円山、四条派を学んで折衷的な画体を創り、特に筆法に鋭い覇気があって個性的である。その長男の岱、養子の良、義子の連山をはじめ望月玉川、白井華陽、河村文鳳、森鳳州などの高弟や多くの門人を出して、高名な四条派に対応して一派をなしたので、これを岸派という。

最近のオークションに佐伯岸駒の長男の岸岱の作品が出品されていました。



岸岱を知っている人はほとんどいないと思いますが、なかなかの画家です。ネットオークションにて16万で落札されてらしいです。欲しかったのですが、残念ながら縁がありませんでした。






岸駒の虎を題材とした作品は一般的には少々筆の荒いものが多いです。この手の作品は贋作が非常に多いのも事実です。作品の数は非常に少ないですが、中には丁寧な描写で着色されてものもあり、リアルな縞文様と繊細な毛の描き方は明らかに円山応挙の影響と思われます。最初は円山応挙のごとく人懐っこい猫のような虎(本作品の頃)ですが、寛政11年に清人から虎の標本を手に入れたことから画風が、野生的な迫力に溢れ、応挙よりも虎らしくなります。(下記写真説明文参照)

子の岸岱も同じような虎の作品を描いており、上記の作品がその代表的な作品です。



岸駒筆 「猛虎」 思文閣墨蹟資料目録 第460号 作品NO38 評価金額 1800万 



佐伯岸駒の着色された作品は、思文閣で1800万円という高額な評価です。

これからは「人懐っこい虎」ではなく「猛虎」のような厳しさで商いをしなくていけません。


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