Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

あの事件が起こった夏

2020-07-26 | マスメディア批評
今晩から楽劇「ニーベルンゲンの指輪」放送が始まる。先ずは前夜祭「ラインの黄金」である。2015年のバイロイト音楽祭での第一クールの演奏である。これは担当しているバイエルン放送協会で生中継された。同カストルフ演出の制作も三年目で生中継はこの前夜祭だけだった。

そしてキー放送局が部分的に初めての放送とあった。最初は何らかの間違いと思っていたが、理由が分かった。編集の必要があったのだ。キリル・ペトレンコ指揮の最後の夏で、六月からカタリーナ・ヴァークナー一味による腹違いの姉の共同代表取締役パスキエ夫人追放ということで「非人道的な扱い」としてダニエル・バレンボイムなどが揃って声明を出した。

背後には、ペトレンコを連れて来たという事で、また五月にベルリナーフィルハーモニカーの次期シェフに選任されたという事で、元祖音楽監督からの攻撃があった。それによって、2014年における歌手陣もジークフリートを歌ったライアンが契約を結ぶことが出来ず、配役面でも破壊工作が指導部から謀られた。パスキエ夫人がそこにいたならば有り得なかったのだった。更に前年のジァーマンウイング激突事件で二人の歌手の命は失われていた。それどころか楽員にも刃こぼしがされたようである。

それによって、キリル・ペトレンコも「本来ならば指揮をキャンセルしたいところだが、配役などメムバーの為に任を負う」とこの人らしい声明を出した。そのような塩梅だったから、公演中にも妨害行為に喘いだと思う。だから、第二夜「ジークフリード」などは明らかに管弦楽団が上手くいかなかったり、荒くなっていた。初年度の2013年も同様の傾向はあったのだが、新聞紙上でも指摘されることとなった。そのようなことからアーカイヴにするならば編集は必要だった。

但し2015年夏の第一夜以降の中継録音も編集される余裕も無く流されて、上のような明らかな問題点は顕著だったのだ。だから個人的にも「ジークフリート」に於いては明らかに2014年の実演に接した公演の方が遥かに良かったのを確認している。しかし2015年に明らかにものにしたのは第一夜「ヴァルキューレ」だった。

兎に角、楽しみな中継である。

さて、楽劇「エレクトラ」の楽譜に眼をざっと通した。音資料を探していたら、先ずはシェロー演出のエクサンプロヴァンスでのサロネン指揮の映像があった。幾らか流したが、残念ながら使いものにはならなかった。こうした独墺系の音楽をこの人が振ると本当に楽譜を読めるのだろうかと疑わざるを得ない。歌手のドイツ語の何とか云々以上にフィンランドではしっかりしたカリキュラムがあるのだろうかと思う。中欧とか北欧とか以前の問題ではないのか?

そこでさらに探すとカール・ベーム博士指揮の知らない録音が出て来た。最後の仕事として映画を撮っていたのは知っているがそれとは全く異なり1960年のドレスデンでのDG録音だった。「ばらの騎士」も同じように録音しているのだが、これはまた素晴らしい録音で、指揮者としての超一流の腕を否応なく示している。一体この曲を作曲家自身はどのように振っていたのだろうかと思う。来週アスミク・ギリゴーリアンが歌うクリソテミスに注目すると、この録音ではとても不安定になってしまっている。ここが決まればというところ続出で、たとえ彼女のドイツ語歌唱が不確かでも大きな期待が膨らんだ。その面でも上手い人が歌っている録音も探してみなければいけない。



参照:
音楽LinuxPCの掃除 2020-07-23 | 文化一般
アルベリヒは南仏に消えて、 2015-06-14 | 雑感


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