医療技術の最前線 生命を救う技術、苦痛を除く技術, 永井明, 講談社ブルーバックス B-1060, 1995年
・医者から作家へ転身し『ぼくが医者をやめた理由』などを書いた著者による、日進月歩の医療技術についてのレポート。『医療技術』と一口にいってもその範囲はとても広いが、ここでは工学の技術による最新の治療装置の紹介が中心となっている。老人医療、精神病、薬学などなど、具体的なモノが見えにくい分野については触れられていない。
・とっぱじめの章のMRIについての著者オリジナルの説明がケッサクです。専門外の文献を一生懸命解読し、理解しようとした苦労が窺えます。しかし一度やって懲りたのか、以降の章は無難な教科書的説明に終始しています。そのせいか全体に内容が薄く感じられ、少々物足りない印象を受けます。
・「医療行為の第一義は人の命を救うことなわけだから、医療技術の進歩は、基本的には歓迎すべきなのだと思う。だがなぜか、最近ここしばらくの医療技術の進歩に対し、ぼくは気持ちの上で奇妙なひっかかりを感じてしまうのである。」p.13
・「■医療技術の最前線■もくじ■
プロローグ――高度救命救急センター 5
I 新しい診断法が病気を見つける 19
1 MRI(磁気共鳴影像法)――磁気で人体をのぞく 20
2 心エコー診断法(カラー・ドプラー法)――超音波で心臓を見る 27
3 DNAフィンガープリント――「DNA鑑定」は正しいか? 34
4 テレパソロジー(遠隔病理診断システム)――離れた場所から病気を診断 42
II 最新治療で不治の病はなくなるか 51
1 PTCA(経皮経管的冠動脈形成術)――風船で心臓の血管を広げる 52
2 ラパコレ(腹腔鏡下胆嚢摘出術)――開腹手術はいらなくなるか 59
3 体外衝撃波結石破砕術――体内にできた石を体外から砕く 67
4 レーザー治療――アザをレーザーで消す 75
5 光線力学的ガン診断治療装置――レーザーでガンを殺す 82
6 顕微受精――人工授精の最先端 89
7 高圧酸素治療装置――酵素の中に入ると病気が治る? 98
8 ガンマユニット――脳腫瘍を攻撃するガンマ線ビーム 105
9 重粒子線ガン治療装置(HIMAC)――新世代の放射線治療法 113
III ここまで進んだ人工器官 121
1 人工皮膚――火傷の治療がパワーアップ 122
2 人工関節――リウマチ患者の救世主 129
3 人工肛門(ストーマ)――直腸ガン患者を日常生活に復帰させたもの 135
4 人工内耳――電気信号で音を「聴く」 142
5 人工水晶体――白内障の治療に威力を発揮 149
6 人工赤血球――夢の人工血液は可能か? 156
エピローグ――ガンの疼痛コントロール 163 」p.14
・「以下、悪戦苦闘の末読み解いた、ぼく流のMRIの原理である。 ぼくたちのからだの中にある水素原子のプロトン(陽子)は、ふつうてんでんばらばらの方向を向いている。それが、強い磁場の中に入ると、プロトンたちはいっせいにその磁場の方向を向き、コマのような首振り運動(スピン)をはじめる。 「前へならえ! 頭ぐるぐるまわせ!」 これは、プロトンが磁石のような性質をもっているためだ。 そこにさらに、特定周波数の電磁場をかけると、プロトンは電磁波のエネルギーを吸収し、さらに激しくスピンしながら、ふたたびいっせいにある特定の方向を向く。 「右向け右! さらに強くまわせ!」 そんな状態にしておいて、今度はパチンと電磁波を切る。すると、プロトンは吸収した電磁波エネルギーを放出しながら、もとの状態に戻ろうとする。 「ふたたび、前へならえ!」 だが、正常な組織と病巣部分では、このエネルギー放出スピードが異なっている。つまり、放出される電磁波の強さが違っているため、みんないっせいに、「前へならえ!」とはいかないのである。 MRIというのは、その(MR信号)差異をキャッチし、コンピュータで処理、画像化してやろうというものだ。 わかりましたか? 少々不安が残るが、話を進めよう。」p.22
・「ここまで、新しいガンの治療法についてもいくつかリポートしてきた。そして、先端医療技術を駆使することにより、従来ならただ手をこまねいているしかなかったガン患者を生還させることも可能だということがわかった。喜ばしいことだと思う。だが同時に、それらがオールマイティでないこともまた、確認できた。ある限定された条件のもとで、「うまくいくこともありうる」というのが、取材を終えての実感だ。」p.163
・医者から作家へ転身し『ぼくが医者をやめた理由』などを書いた著者による、日進月歩の医療技術についてのレポート。『医療技術』と一口にいってもその範囲はとても広いが、ここでは工学の技術による最新の治療装置の紹介が中心となっている。老人医療、精神病、薬学などなど、具体的なモノが見えにくい分野については触れられていない。
・とっぱじめの章のMRIについての著者オリジナルの説明がケッサクです。専門外の文献を一生懸命解読し、理解しようとした苦労が窺えます。しかし一度やって懲りたのか、以降の章は無難な教科書的説明に終始しています。そのせいか全体に内容が薄く感じられ、少々物足りない印象を受けます。
・「医療行為の第一義は人の命を救うことなわけだから、医療技術の進歩は、基本的には歓迎すべきなのだと思う。だがなぜか、最近ここしばらくの医療技術の進歩に対し、ぼくは気持ちの上で奇妙なひっかかりを感じてしまうのである。」p.13
・「■医療技術の最前線■もくじ■
プロローグ――高度救命救急センター 5
I 新しい診断法が病気を見つける 19
1 MRI(磁気共鳴影像法)――磁気で人体をのぞく 20
2 心エコー診断法(カラー・ドプラー法)――超音波で心臓を見る 27
3 DNAフィンガープリント――「DNA鑑定」は正しいか? 34
4 テレパソロジー(遠隔病理診断システム)――離れた場所から病気を診断 42
II 最新治療で不治の病はなくなるか 51
1 PTCA(経皮経管的冠動脈形成術)――風船で心臓の血管を広げる 52
2 ラパコレ(腹腔鏡下胆嚢摘出術)――開腹手術はいらなくなるか 59
3 体外衝撃波結石破砕術――体内にできた石を体外から砕く 67
4 レーザー治療――アザをレーザーで消す 75
5 光線力学的ガン診断治療装置――レーザーでガンを殺す 82
6 顕微受精――人工授精の最先端 89
7 高圧酸素治療装置――酵素の中に入ると病気が治る? 98
8 ガンマユニット――脳腫瘍を攻撃するガンマ線ビーム 105
9 重粒子線ガン治療装置(HIMAC)――新世代の放射線治療法 113
III ここまで進んだ人工器官 121
1 人工皮膚――火傷の治療がパワーアップ 122
2 人工関節――リウマチ患者の救世主 129
3 人工肛門(ストーマ)――直腸ガン患者を日常生活に復帰させたもの 135
4 人工内耳――電気信号で音を「聴く」 142
5 人工水晶体――白内障の治療に威力を発揮 149
6 人工赤血球――夢の人工血液は可能か? 156
エピローグ――ガンの疼痛コントロール 163 」p.14
・「以下、悪戦苦闘の末読み解いた、ぼく流のMRIの原理である。 ぼくたちのからだの中にある水素原子のプロトン(陽子)は、ふつうてんでんばらばらの方向を向いている。それが、強い磁場の中に入ると、プロトンたちはいっせいにその磁場の方向を向き、コマのような首振り運動(スピン)をはじめる。 「前へならえ! 頭ぐるぐるまわせ!」 これは、プロトンが磁石のような性質をもっているためだ。 そこにさらに、特定周波数の電磁場をかけると、プロトンは電磁波のエネルギーを吸収し、さらに激しくスピンしながら、ふたたびいっせいにある特定の方向を向く。 「右向け右! さらに強くまわせ!」 そんな状態にしておいて、今度はパチンと電磁波を切る。すると、プロトンは吸収した電磁波エネルギーを放出しながら、もとの状態に戻ろうとする。 「ふたたび、前へならえ!」 だが、正常な組織と病巣部分では、このエネルギー放出スピードが異なっている。つまり、放出される電磁波の強さが違っているため、みんないっせいに、「前へならえ!」とはいかないのである。 MRIというのは、その(MR信号)差異をキャッチし、コンピュータで処理、画像化してやろうというものだ。 わかりましたか? 少々不安が残るが、話を進めよう。」p.22
・「ここまで、新しいガンの治療法についてもいくつかリポートしてきた。そして、先端医療技術を駆使することにより、従来ならただ手をこまねいているしかなかったガン患者を生還させることも可能だということがわかった。喜ばしいことだと思う。だが同時に、それらがオールマイティでないこともまた、確認できた。ある限定された条件のもとで、「うまくいくこともありうる」というのが、取材を終えての実感だ。」p.163
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