昨年11月23日にも同様の記載をしたが,今回はフランスからの報告.
まず背景としては,FMR1遺伝子のCGGリピート延長(200リピート以上;full-mutationと定義)は精神遅滞,運動障害,自閉症などを特徴とするfragile X syndromeの原因となる.ちなみに正常は40リピート以下で,41~54リピートはintermediateと考えられている.今回問題にするのはCGGリピートが55-200回続くPremutation expansion (PE)を有するケースで,20%の女性ではpremature ovarian failureをもたらすことが知られていたが,PEを有する男性は,PEを持たない男性に比べパーキンソン病によく似た振戦や失調歩行を13倍発現しやすいことが報告され注目を集めた(fragile X-associated tremor/ataxia syndrome;FXTAS)(JAMA 291; 460-9, 2004).神経学的には小脳失調,企図振戦,筋強剛,寡動,認知機能障害,自律神経障害を呈しうる.このため,MSAも鑑別診断に挙がりうる(というか,MSAのなかにFXTASが紛れ混んでいる可能性が考えられる).
今回,サルペトリエ病院より報告された研究は,対象は123名.内訳はMSA-C 55名.MSA-P 22名.OPCA 19名.CA(cerebellar atrophy) 27名である.OPCAはGilman分類を満たさない弧発性SCDや診断除外項目の痴呆を有する症例,CAは画像上,小脳萎縮を認めるが,Gilman分類を満たさず,かつ家族歴を有するもの(既知のAD-SCDは除外済み).結果としては,PEを認めたのはわずか2名のみ(110および135リピート).1例は家族歴を有する男性(小脳失調+前頭葉機能障害,前頭葉白質異常信号),もう1例はMSA-Cと診断されていた女性(躁うつ病,失調,振戦,錐体路障害,排尿障害).また9名(7%)で41~53リピートのintermediate alleleを認めた.以前のテキサス大学での報告でも同様の結論であったが,MSAの表現型においてFMR1遺伝子のPEが原因となっている症例は少ないものと考えられる.(また日本では私の知る限りFXTAS自体が報告されていない)
Arch Neurol 62; 962-966, 2005
まず背景としては,FMR1遺伝子のCGGリピート延長(200リピート以上;full-mutationと定義)は精神遅滞,運動障害,自閉症などを特徴とするfragile X syndromeの原因となる.ちなみに正常は40リピート以下で,41~54リピートはintermediateと考えられている.今回問題にするのはCGGリピートが55-200回続くPremutation expansion (PE)を有するケースで,20%の女性ではpremature ovarian failureをもたらすことが知られていたが,PEを有する男性は,PEを持たない男性に比べパーキンソン病によく似た振戦や失調歩行を13倍発現しやすいことが報告され注目を集めた(fragile X-associated tremor/ataxia syndrome;FXTAS)(JAMA 291; 460-9, 2004).神経学的には小脳失調,企図振戦,筋強剛,寡動,認知機能障害,自律神経障害を呈しうる.このため,MSAも鑑別診断に挙がりうる(というか,MSAのなかにFXTASが紛れ混んでいる可能性が考えられる).
今回,サルペトリエ病院より報告された研究は,対象は123名.内訳はMSA-C 55名.MSA-P 22名.OPCA 19名.CA(cerebellar atrophy) 27名である.OPCAはGilman分類を満たさない弧発性SCDや診断除外項目の痴呆を有する症例,CAは画像上,小脳萎縮を認めるが,Gilman分類を満たさず,かつ家族歴を有するもの(既知のAD-SCDは除外済み).結果としては,PEを認めたのはわずか2名のみ(110および135リピート).1例は家族歴を有する男性(小脳失調+前頭葉機能障害,前頭葉白質異常信号),もう1例はMSA-Cと診断されていた女性(躁うつ病,失調,振戦,錐体路障害,排尿障害).また9名(7%)で41~53リピートのintermediate alleleを認めた.以前のテキサス大学での報告でも同様の結論であったが,MSAの表現型においてFMR1遺伝子のPEが原因となっている症例は少ないものと考えられる.(また日本では私の知る限りFXTAS自体が報告されていない)
Arch Neurol 62; 962-966, 2005