Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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REM睡眠行動障害(RBD)患者の神経変性疾患発症リスク

2009年04月19日 | その他の変性疾患
 RBDについては以前,本ブログでも紹介したことがあるが,このうち基礎疾患を認めない特発性RBDは,のちに中枢神経においてαシヌクレインの蓄積を伴うような疾患,具体的にはパーキンソン病(PD)やレビー小体性認知症(LBD),多系統萎縮症(MSA)といった神経変性疾患を発症しうることが報告されている.しかしながら,特発性RBDの多数例を長期にわたって経過観察し,その後の神経変性疾患の発症リスクや,発症する疾患の種類を検討した報告は乏しい.

 今回,フランスから特発性RBD症例を長期にわたり経過観察し,神経変性疾患の発症リスクを検討した研究が報告された.1989年から2006年までの17年間に,113名の特発性RBDを臨床的に診断し,さらにPSGにて確定診断を下し,その際,何らかの変性疾患を合併していなかった93名(すなわち特発性RBD)が対象である.平均年齢は65.4歳で,男性の比率が80.4%であった.経過観察中,26/93名(28%)が何らかの神経変性疾患を発症し,その内訳は,14名がPD,7名がLBD,4名がアルツハイマー病の診断基準を満たす認知症,1名がMSAであった(診断はいずれも臨床診断である).計算により予測した神経変性疾患の発症リスクは,5年間で17.7%,10年間で40.6%,12年間で52.4%であった.

 既報の検討は少数例になるが,29名の男性患者5年間の経過観察で38%の発症リスクという報告(Neurology 46; 388-393, 1996)や,44名の患者5年間の経過観察で45%(Lancet Neurol 5; 572-577, 2006)という報告がある.今回の検討はこれらと比べると発症リスクは低いが,それでも特発性RBD症例が何らかの神経変性疾患を発症するリスクは少なくはないことが分かる.また,その内訳の大半はPDないしLBDであるという結果は既報と同様であった.これらの情報は,特発性RBD症例のカウンセリングにおいて重要であるだけでなく,PDやLBDの発症前から神経保護療法を開始するという新しい時代の神経内科治療法につながるものと思われる.

Neurology 72; 1296-1300, 2009 

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