地元テレビ局のディレクターさんから,「寒さと脳の病気の関係について教えてほしい」との依頼があり,寒さと頭痛・脳卒中の関係について勉強してみた.このディレクターさんからは過去にも「うとうとした時,ビクッとするのはなぜ?」「しゃっくり(吃逆)を止める方法を教えて!」「5月病って何?」など難問を依頼され,どうにか答えてきた経緯がある.今回の質問については,インタビューでは難しい用語は避けたが,ここでは少し詳しく述べてみたい.
1. 寒さと頭痛に関連はあるか?
寒冷曝露は頭痛を来すことが知られている.最近,改訂され日本語版も発表された国際頭痛分類第3版β版を見ると,この頭痛は「寒冷刺激による頭痛」と記載され,学術的にも正式な頭痛として認められている.また,さらに「外的寒冷刺激による頭痛」と,「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」に分類されている.非拍動性の急性前頭部痛である.前者はとても寒いところや冷水に飛び込んだ際に生じる.また後者の代表例は,アイスクリーム頭痛である(これは以前,病名として使用されていたが,3版β版では使用されなくなった).
(機序)「外的寒冷刺激による頭痛」では寒冷刺激に伴い,血管は収縮するが,その後,反応性に拡張し,血管・神経(三叉神経)に炎症をもたらし,頭痛をもたらす可能性が指摘されている(Raskin NH).後者は口,咽頭から寒冷刺激が入り,三叉神経,舌咽神経が刺激され,三叉神経核に伝わり,痛みとして認識されると教科書には記載されている(一種の関連痛といえる)(Wolff HG).しかし,あまり熱心で研究されている頭痛ではないようで,きちんとした論文は調べた範囲では見当たらない.
Raskin NH. Headache 2nd ed. Churchill Livingstome, London
Wolff HG (ed.): Headache and other head pain, 2nd ed. Oxford University Press
(対策)寒冷刺激を避けること,保温は有効である.
余談だが,肩こりによる頭痛(緊張型頭痛)はエアコンの冷風による悪化する.冷風を避けることや温湿布が有効と記載されている.
2. 寒さと脳卒中に関連はあるか?
脳卒中の一部は冬に多く起こることが知られている.本邦の報告で,脳出血は冬(年末年始)に多いこと(図),心原性脳塞栓は冬に多いことが知られている.一方,ラクナ梗塞やアテローム性梗塞は夏に多く(脱水等による),1月にも再増加する.
(豊田章宏.全国労災病院46000例からみた脳卒中発症の季節性(2002~2008).脳卒中33; 226-235, 2011)
著者による解説記事 (図も同ホームページから引用)
(機序)冬の脳卒中は急な温度変化が誘因となる.外出し,いきなり寒いところに出るのは危険である.血管の急速な収縮,急激な血圧の上昇が起こる.とくに高血圧を有する人ではこの傾向が強いとの記載がある.また糖尿病,高血圧,高脂血症といった動脈硬化の危険因子を有する人の場合は要注意である.
(注意すべき状況)室内から外出する際には気をつける必要があるが,家の中(脱衣場やトイレといった寒いところ)でも注意が必要である.入浴前後に脳卒中を起こすことがあるが,脱衣の際の寒さに加え,急に熱い湯に入ると,血圧が急激に上昇する.また寝室も早朝には室温が下がるが,温度が低下すると,適温と比較して,血圧が高くなることも報告されている.
(対策)気温の低い日は保温に努め,血圧上昇を避ける.寒い日の外出は防寒具(マフラー,手袋)を使用する.脱衣所や浴室の洗い場,トイレを暖め,居室との温度変化を減らす.入浴時には手足への「湯かけ」や半身浴を行い,急激な血圧上昇を防ぐ.入浴後は脱水を防ぐための水分摂取する.万が一,症状(顔の麻痺,手の麻痺,ろれつ不良;Face, Arm, Speech, Time→FAST)の出現があったら,直ぐ救急車を呼ぶ.発症後4.5時間以内から,根本的治療である血栓溶解療法を受けられる.
アイスクリーム頭痛については過去にも記載したことがあるので,こちらもご覧いただきたい.
「なぜアイスクリームで頭痛が起こるか?」
1. 寒さと頭痛に関連はあるか?
寒冷曝露は頭痛を来すことが知られている.最近,改訂され日本語版も発表された国際頭痛分類第3版β版を見ると,この頭痛は「寒冷刺激による頭痛」と記載され,学術的にも正式な頭痛として認められている.また,さらに「外的寒冷刺激による頭痛」と,「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」に分類されている.非拍動性の急性前頭部痛である.前者はとても寒いところや冷水に飛び込んだ際に生じる.また後者の代表例は,アイスクリーム頭痛である(これは以前,病名として使用されていたが,3版β版では使用されなくなった).
(機序)「外的寒冷刺激による頭痛」では寒冷刺激に伴い,血管は収縮するが,その後,反応性に拡張し,血管・神経(三叉神経)に炎症をもたらし,頭痛をもたらす可能性が指摘されている(Raskin NH).後者は口,咽頭から寒冷刺激が入り,三叉神経,舌咽神経が刺激され,三叉神経核に伝わり,痛みとして認識されると教科書には記載されている(一種の関連痛といえる)(Wolff HG).しかし,あまり熱心で研究されている頭痛ではないようで,きちんとした論文は調べた範囲では見当たらない.
Raskin NH. Headache 2nd ed. Churchill Livingstome, London
Wolff HG (ed.): Headache and other head pain, 2nd ed. Oxford University Press
(対策)寒冷刺激を避けること,保温は有効である.
余談だが,肩こりによる頭痛(緊張型頭痛)はエアコンの冷風による悪化する.冷風を避けることや温湿布が有効と記載されている.
2. 寒さと脳卒中に関連はあるか?
脳卒中の一部は冬に多く起こることが知られている.本邦の報告で,脳出血は冬(年末年始)に多いこと(図),心原性脳塞栓は冬に多いことが知られている.一方,ラクナ梗塞やアテローム性梗塞は夏に多く(脱水等による),1月にも再増加する.
(豊田章宏.全国労災病院46000例からみた脳卒中発症の季節性(2002~2008).脳卒中33; 226-235, 2011)
著者による解説記事 (図も同ホームページから引用)
(機序)冬の脳卒中は急な温度変化が誘因となる.外出し,いきなり寒いところに出るのは危険である.血管の急速な収縮,急激な血圧の上昇が起こる.とくに高血圧を有する人ではこの傾向が強いとの記載がある.また糖尿病,高血圧,高脂血症といった動脈硬化の危険因子を有する人の場合は要注意である.
(注意すべき状況)室内から外出する際には気をつける必要があるが,家の中(脱衣場やトイレといった寒いところ)でも注意が必要である.入浴前後に脳卒中を起こすことがあるが,脱衣の際の寒さに加え,急に熱い湯に入ると,血圧が急激に上昇する.また寝室も早朝には室温が下がるが,温度が低下すると,適温と比較して,血圧が高くなることも報告されている.
(対策)気温の低い日は保温に努め,血圧上昇を避ける.寒い日の外出は防寒具(マフラー,手袋)を使用する.脱衣所や浴室の洗い場,トイレを暖め,居室との温度変化を減らす.入浴時には手足への「湯かけ」や半身浴を行い,急激な血圧上昇を防ぐ.入浴後は脱水を防ぐための水分摂取する.万が一,症状(顔の麻痺,手の麻痺,ろれつ不良;Face, Arm, Speech, Time→FAST)の出現があったら,直ぐ救急車を呼ぶ.発症後4.5時間以内から,根本的治療である血栓溶解療法を受けられる.
アイスクリーム頭痛については過去にも記載したことがあるので,こちらもご覧いただきたい.
「なぜアイスクリームで頭痛が起こるか?」