若い先生方といっしょに症例報告や臨床研究をまとめていると,よく「初めて英文論文を書くとき,どうやって勉強をしたらよいのですか」と質問される.通常,最初の英文論文を一人で書きあげるのは至難の技で,ほとんど指導医が書いて,その書き方を教えてあげる必要があるように思う.それでもがんばって何度か書いていくうちに,文章のパターン・決まり文句を徐々に覚え始め,執筆はだんだん楽になってくる.決まり文句を覚えるには,良質の論文(その領域でレベルの高いジャーナルの論文)を,繰り返し声を出して読むのが良いと思う.論文として正しくない文章を読んだ時に「こんな表現見たことないなぁ」という違和感を覚えるようになったら,しめたものである.
もうひとつのよく聞く質問は「最初から英語で書くべきですか,日本で書いてから訳せばよいですか」というものだ.英語で最初から書ければベターだが,なかなかそうはいかないと思う.個人的には,臨床の論文では症例の部分だけは最初から英語で書いている(あまり推敲の必要がないためである).つぎにIntroductionとDiscussionに移るが,書くべきことの骨子を日本語で箇条書きにし,論理の展開に誤りがないかなど十分に確認し,日本語である程度肉付けをしてから,英訳を開始するスタイルでやっている.Abstractはそれまで書いた文章を用いて最後に書く.基礎論文の場合も同様で,あまり推敲の必要のないMethod & Resultsは英語で直接書き始め,つぎにIntroductionとDiscussionを同様の方法で考え,最後にabstractを書く.
自分は論文の書き方はボスに徹底的にしごかれたり,自分でも試行錯誤を行って学んだが,最近はつらい思いをしなくてもいろいろ指南書が出ている.このなかで一番のお勧めは「誰でも書ける!英語医学論文プロのコツ」である.著者は日本研究修士のイギリス人である.臨床より基礎系論文の書き方の本なのだが,IntroductionとMethod & Results,Discussionのそれぞれのセクションで気をつけねばならないことは何か?時制はどのように使い分けるか?などとても参考になる.またKISSの法則といって,Keep It Short, Stupid!といかに論文を冗長にせず,簡潔にまとめることが大切か,繰り返し述べている.100ページちょっとの薄い本にも関わらず,中身の濃い本なので,ビギナーにはご一読をお勧めしたい.
あとは実際に論文を書き進めると,自分の書いた表現が正しいのか不安になる.これは面倒でもひとつひとつ確かめていく(そうしないと上達しない).このときに役に立つのはGoogle scholarだ.PubMedと違って本文を含めた全文検索を行うので,自分の表現が過去の論文にあるか,もしくはもっと良い表現がないのか,調べることができる.あとは「ライフサイエンス英語表現使い分け辞典」のような辞書を用いて,似た意味の単語をどのように使い分けるのか,また動詞のあとに続くのは前置詞なのか節が良いのか,前置詞なら何が良いのかなど確認を行っていく必要がある.このような実践的な技術を学ぶには「インターネット時代の英語医学論文作成術―プロが使っている究極のワザ」も良い本である.
さらに,論文を書くとき,referenceを自動作成するソフト(EndNoteなど;EndNote X2(E) )を使用すると便利である.ソフトはやや高価ではあるが,便利なので購入して損はない.解説書の「最新EndNote活用ガイド デジタル文献整理術」も分かりやすくて良い本である.
いずれにしても大事なことは,日本語でも英文でもがんばって若いうちに挑戦し,まずは一本書いてみることである.一度でも書いた経験があれば,次のハードルは低くなり,さらに書けば,さらにハードルは低くなる.学会報告だけで終わりにしてしまうこともあるかと思うが,学会報告のみではなにも残らない!学会報告と論文とまったくそれに要するエネルギー・苦労の度合いが違うが,その分,論文は形としていつまでも残るものである.
ぜひ頑張って若いうちから論文執筆に取り組むことをお勧めしたい.自分の論文が見ず知らずの外国のドクターの目にとまり,手紙やメールで別刷りを請求されたり,コメントをもらったりするにはとても嬉しいもので,苦労も報われたと思える瞬間である.自分の経験が日本のみならず外国においてもドクターやその患者さんに役立つかもしれないということはすごいことだと思い.ぜひ頑張って論文に挑戦しよう!
おまけ;以下,最近,読んで面白かった本を挙げておく.
リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト);
日常の臨床現場の中で生じた疑問を,臨床研究にて取り組むに値する「リサーチ・クエスチョン」の形に直すかを教えてくれる本.
臨床研究マスターブック;
臨床研究の行い方を様々な先生が指南している.臨床研究でのエクセルの使い方などビギナーにはとても良い企画である.
介護保険で利用できる福祉用具―電動ベッドから車いす・歩行器まで (岩波ブックレット);
臨床研究とは関係ないが,恥ずかしながら初めて知ったことがいろいろあった.
ゴールデンスランバー;
まったく医学とは無関係(笑).でも最近読んだミステリーのなかでは最高.
もうひとつのよく聞く質問は「最初から英語で書くべきですか,日本で書いてから訳せばよいですか」というものだ.英語で最初から書ければベターだが,なかなかそうはいかないと思う.個人的には,臨床の論文では症例の部分だけは最初から英語で書いている(あまり推敲の必要がないためである).つぎにIntroductionとDiscussionに移るが,書くべきことの骨子を日本語で箇条書きにし,論理の展開に誤りがないかなど十分に確認し,日本語である程度肉付けをしてから,英訳を開始するスタイルでやっている.Abstractはそれまで書いた文章を用いて最後に書く.基礎論文の場合も同様で,あまり推敲の必要のないMethod & Resultsは英語で直接書き始め,つぎにIntroductionとDiscussionを同様の方法で考え,最後にabstractを書く.
自分は論文の書き方はボスに徹底的にしごかれたり,自分でも試行錯誤を行って学んだが,最近はつらい思いをしなくてもいろいろ指南書が出ている.このなかで一番のお勧めは「誰でも書ける!英語医学論文プロのコツ」である.著者は日本研究修士のイギリス人である.臨床より基礎系論文の書き方の本なのだが,IntroductionとMethod & Results,Discussionのそれぞれのセクションで気をつけねばならないことは何か?時制はどのように使い分けるか?などとても参考になる.またKISSの法則といって,Keep It Short, Stupid!といかに論文を冗長にせず,簡潔にまとめることが大切か,繰り返し述べている.100ページちょっとの薄い本にも関わらず,中身の濃い本なので,ビギナーにはご一読をお勧めしたい.
あとは実際に論文を書き進めると,自分の書いた表現が正しいのか不安になる.これは面倒でもひとつひとつ確かめていく(そうしないと上達しない).このときに役に立つのはGoogle scholarだ.PubMedと違って本文を含めた全文検索を行うので,自分の表現が過去の論文にあるか,もしくはもっと良い表現がないのか,調べることができる.あとは「ライフサイエンス英語表現使い分け辞典」のような辞書を用いて,似た意味の単語をどのように使い分けるのか,また動詞のあとに続くのは前置詞なのか節が良いのか,前置詞なら何が良いのかなど確認を行っていく必要がある.このような実践的な技術を学ぶには「インターネット時代の英語医学論文作成術―プロが使っている究極のワザ」も良い本である.
さらに,論文を書くとき,referenceを自動作成するソフト(EndNoteなど;EndNote X2(E) )を使用すると便利である.ソフトはやや高価ではあるが,便利なので購入して損はない.解説書の「最新EndNote活用ガイド デジタル文献整理術」も分かりやすくて良い本である.
いずれにしても大事なことは,日本語でも英文でもがんばって若いうちに挑戦し,まずは一本書いてみることである.一度でも書いた経験があれば,次のハードルは低くなり,さらに書けば,さらにハードルは低くなる.学会報告だけで終わりにしてしまうこともあるかと思うが,学会報告のみではなにも残らない!学会報告と論文とまったくそれに要するエネルギー・苦労の度合いが違うが,その分,論文は形としていつまでも残るものである.
ぜひ頑張って若いうちから論文執筆に取り組むことをお勧めしたい.自分の論文が見ず知らずの外国のドクターの目にとまり,手紙やメールで別刷りを請求されたり,コメントをもらったりするにはとても嬉しいもので,苦労も報われたと思える瞬間である.自分の経験が日本のみならず外国においてもドクターやその患者さんに役立つかもしれないということはすごいことだと思い.ぜひ頑張って論文に挑戦しよう!
おまけ;以下,最近,読んで面白かった本を挙げておく.
リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト);
日常の臨床現場の中で生じた疑問を,臨床研究にて取り組むに値する「リサーチ・クエスチョン」の形に直すかを教えてくれる本.
臨床研究マスターブック;
臨床研究の行い方を様々な先生が指南している.臨床研究でのエクセルの使い方などビギナーにはとても良い企画である.
介護保険で利用できる福祉用具―電動ベッドから車いす・歩行器まで (岩波ブックレット);
臨床研究とは関係ないが,恥ずかしながら初めて知ったことがいろいろあった.
ゴールデンスランバー;
まったく医学とは無関係(笑).でも最近読んだミステリーのなかでは最高.