Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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11月29日(日)のつぶやき

2009年11月30日 | 脳血管障害
03:48 from web
三叉神経終末に豊富に発現し,神経原性炎症および血管拡張に関与するCGRPは新たな片頭痛治療の標的分子である.CGRP受容体拮抗薬(=gepant系薬)は,triptanと異なり,中枢性感作(sensitization)も抑制する可能性がある.by 第37回頭痛学会
03:48 from web
gepant系薬としてolcegepant,telcagepant,MS-694153が開発されている.olcegepantは副作用(肝障害)で治験ストップ.現在はtelcagepantが有望視され,triptan non-responderの治療や併用療法が期待されている.
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治療研究における「死の谷」

2009年11月29日 | 認知症
先日,耳鼻科医の友人と食事をした際,「神経内科の領域で,今後,一番重要となる疾患は何だ」と聞かれた.「おそらく認知症だろう」と返事をした.まもなく人口の4人に1人が高齢者になるという高齢化社会において,認知症患者さんは今後,うなぎ登りに増加するだろう.何とか発症を5年でも遅らせる治療法が実現できないものかと強く思う.

アルツハイマー病に克つ (朝日新書)」(田平武先生著)を拝読した.アルツハイマー病の発症メカニズムから始まり,病因蛋白としてのアミロイドβの重要性,現在行われている治療法,そしてアルツハイマー病にならないためにはどのように生活習慣に気をつければよいかなど,読みやすい文章で書かれている.ぜひ認知症に関心のある一般の方々にもお読みいただきたい本である.

しかしこの本の面白い点は別にあって,そのひとつは著者が取り組んでおられる「アミロイドβを標的としたワクチン療法開発の経緯」である.「アミロイドβを標的としたワクチン療法」とは,脳内の有害物質であるアミロイドβを除去するために,アミロイド遺伝子を偽ウイルス(ウイルス・ベクター)に忍び込ませて「飲むワクチン」として体内に送り込む方法である.なぜそのようなことがアルツハイマー病の治療として有効であるのか,また従来のワクチン療法と異なり副作用(免疫性の髄膜脳炎)を来たしにくいと考えられているが,それはなぜなのか,とてもわかりやすく書かれていて勉強になった.

そして,もうひとつ,一番関心を持ったのは,その素晴らしいアイデアが「臨床応用を有望視されながら開発が遅れている理由」に関する記載である.著者はこのアイデアを臨床現場にて「治療薬」として使用されることを目指しあらゆる努力を惜しまない.そこには患者さんに貢献したいという強い情熱(passion)がある.しかし,それでもなお乗り越え難い,患者さんへの貢献とか学問の追及といったものとは無縁の障壁があるのだ.

「科学研究に大きな発明や発見があると,有名な雑誌に掲載され,また新聞やテレビ等でも報道されます.研究者にとってはそのことが非常に大きな喜びであり,また励みにもなります.・・・しかしその発明・発見に基づく技術が開発・実用化され,世のため人のためになったときに,本当の称賛は与えられるのです.その間には,実用化に向けたひたむきな努力があるだけで,この間の仕事の成果を,一流の雑誌やマスコミが取り上げることはありません.この間に横たわる困難な道を,「死の谷(注)」といっています.いま私はまさに,「死の谷」を歩いており,上っては下がり,上っては下がりの連続です.・・・私は,アルツハイマー病に苦しむ多くの患者とその家族の方々に,少しでも役に立ちたいという気持ちでいっぱいであり,「死の谷」を懸命に歩いているところです」

印象に残った文章を引用させていただいた.治療を目指す研究とはこういうものなのだとあらためて考えさせられた.困難なことであっても,著者の言うように患者と家族の方々に役に立つため研究に取り組むという気持ちを強く持ち続けることが大切だと改めて考えさせられた.

注;「死の谷」とは大袈裟な表現に思えるかもしれないが,これは著者の作った言葉ではなく,研究開発の成果が具体的な事業化・製品化に結びつかないこと,つまり研究開発と製品化の間にあるギャップのことを「死の谷(valley of death)」と呼ぶ.元来,資金調達の問題のみを指す用語であったが,著者も直面した様々な要因,政治・法律・制度,その他のリソースの不足も含めた原因全般を指す.

アルツハイマー病に克つ (朝日新書)
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11月26日(木)のつぶやき

2009年11月27日 | 脳血管障害
04:00 from web
%FVCの求め方
FVCはFEV1.0%=FEV1.0/FVCなので
FVC=FEV1.0/FEV1.0%=一秒量/一秒率
FVC理論正常値
男性=(0.061X身長cm)-(0.028X Age)-4.65
女性=(0.0466X身長cm)-(0.024X Age)-3.28

04:43 from web
Trousseau症候群の機序
血栓形成機序は複合的.
①血液凝固促進・・・Ⅲ(組織因子;組織トロンボプラスチン)→Ⅶ→Ⅹ活性化
②血小板・・・血小板凝集物質(ADP,トロンボキサンなど)
③血管内皮細胞・・・VEGF(透過性亢進,間接的に凝固亢進)
治療はやはり腫瘍摘出がベスト.

15:07 from web
IgG4関連疾患
IgG4関連疾患という疾患概念が確立されつつあるが,神経内科でも今後注目すべき.
外眼筋麻痺を来たしうる眼窩偽腫瘍のほか,中枢神経系の偽腫瘍や肥厚性硬膜炎との関連が指摘されている.http://bit.ly/5ZhzZN
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米国神経学会のALSに関する新ガイドラインを読む(2)

2009年11月20日 | 運動ニューロン疾患
それでは,AANのALSに関する新ガイドラインの中身をまとめたい.このガイドラインは,1998~2007年の臨床研究論文を評価し,1999年のガイドラインを改訂したものである.結果的に8個のClass I,5個のClass II,43個の Class III論文をreviewしている.以下,まとめを記載する.

1. 薬物療法
①リルゾール(Level A)
4つのClass Iで軽度の効果(生存期間は6~21カ月間延長される)
また従来の「発症5年未満,FVC>60%,気管切開前」という有効症例の条件が緩和されている.

②炭酸リチウム(Level U)
判断不能.2010年7月に完了する多施設研究の結果待ちの状態.

2. 栄養管理
①PEGからの経腸栄養
体重の維持に有効(Level B)
生存期間延長に有効(Level B)
QOL改善に有効かはエビデンス不足(Level U)
PEGをいつ導入すべきかはエビデンス不足(Level U)

嚥下障害の診断は,臨床症状により行い,嚥下造影検査(VF)は必須ではない
PEGのほかに,RIG(radiographically inserted gastrostomy)も今後,検討すべき.
体重減少は予後不良のマーカーであり,PEGは誤嚥防止のために「経口摂取を避ける」という目的から,予後の悪化を防ぐために「体重減少を防ぐ」目的のために行われるという考え方の変換が記載されている

②ビタミン・サプリメントなど
クレアチン(5-10g/day)はALSの進行抑制に無効(Level A)
高用量ビタミンEも治療として考えるべきでない(Level B)
それ以外のものについてはエビデンス不足で判断困難

3. 呼吸管理

①呼吸機能低下を評価する検査
夜間酸素飽和度モニターは肺胞低換気の検出に有用(Level C)
立位の強制肺活量(FVC)に加え,臥位強制肺活量,最大吸気圧(MIP)測定は呼吸機能評価に有用(Level C)
Sniff nasal pressureは高炭酸ガス血症や夜間低酸素血症の検出に有用(Level C)

②NIV(非侵襲的間期療法)・TIV(気管切開下換気療法)
NIVは1つのClass I,3つのClass IIIにて生存期間の延長効果あり(Level B)
NIVはFVC低下スピードを遅くする(Level B)
NIVはおそらく呼吸機能低下患者のQOLを改善する(Level C)
早期におけるNIV導入はNIVのコンプライアンスを改善する(Level C)
Peak cough flowの低下している患者の,とくに急性呼吸器感染時には機械的咳介助(いわゆるMAC)が有用である(Level C)
TIVは長期の人工呼吸器療法を希望する患者のQOL維持に有用(Level C)

4. 病名告知
どのように病名告知を行うべきかについては十分なエビデンスがない(Level U)

5. その他の症状に対するケア
①流涎
ボトックスB(Level B)
唾液腺への低線量放射線照射(Level C)
一般的には抗コリン剤が使用されるが,エビデンスは不十分

②制御不能情動(強制泣き・笑い;pseudobulbar affect)
デキストロメトルファン(dextromethorphan;NMDAアンタゴニスト→メジコン) と硫酸キニジン(quinidine sulfate;σ1アゴニスト)の合剤・Zenvia が有効.FDAに認可されたら使用開始できる(Level B)

③疲労
うつ,睡眠障害,呼吸機能低下などが原因となるが治療については不明.またリルゾールによって生じることがある!よって軽度の生存期間延長効果と疲労を天秤にかけて,リルゾール内服中止も検討する

④クランプ,痙性,うつ,不安,不眠
いずれに対しても十分なエビデンスはない(Level U)

⑤認知・行動障害
診断基準に関するコンセンサスがなく,十分な検討が行われていない(Level U)


以上より,今後,取り組むべき課題として,以下のような項目が考えられる.

呼吸機能の最適な評価方法は何か?
PEG開始時期はいつがよいか?
PEGのQOL,生存への効果は?
認知・行動障害の診断方法は?
リハビリの効果は?
痙性,筋痙攣,便秘,流涎,強制泣き・笑い,痛み,うつ,不安,疲労の治療法は?など

Neurology 73:1218-1226, 2009 

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11月19日(木)のつぶやき

2009年11月20日 | 脳血管障害
11:00 from web
クロピドグレルを活性代謝物への変換するCYP2C19をオメプラゾールは阻害する.両剤を併用する患者においてクロピドグレルの抗血小板作用は半減する.両者を併用すべきでないという米国FDAの見解が発表された.http://bit.ly/4CsR8H
12:18 from web
一方,Lancet誌には,2つのRCTを解析し,抗血小板薬(クロピドグレルとプラスグレル)とPPI併用で,抗血小板作用が低下するが,心臓血管死,心筋・脳梗塞の増加はないとの報告がある.必要ならPPI併用を回避する必要はないと言っている.http://bit.ly/XhCvU
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11月16日(月)のつぶやき

2009年11月17日 | 脳血管障害
17:35 from web
Twitter と Goo ブログをためしに連携させてみた.
17:36 from web
成人における喉頭軟化症(laryngomalacia; floppy epiglottis)は,多系統萎縮症,脳血管障害,頭部外傷,手術の後遺症に加え,何とALSでも生じるらしい.http://www.jibika.or.jp/publish/kaihou112/09.html
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米国神経学会のALSに関する新ガイドラインを読む(1)

2009年11月15日 | 運動ニューロン疾患
1999年,米国神経学会(AAN)によるALSに対するpractice guidelineが公表されたが,このあとの10年間の臨床研究の進歩を取り込んだ新しいガイドラインが先日公開された.このガイドラインの変更点についてまとめてみたいが,その前に,AANのガイドラインはどのように作られるのか,またそれを学ぶ意義について整理したい.

① ガイドラインの作り方を学ぶ意義
まずガイドラインの作成プロセスを学ぶことは,「日常診療における疑問を解決する正しいお作法を学ぶこと」につながると個人的には考えている.冒頭の図はAAN作成のスライドだが,ガイドライン作成のプロセスは3つに分けられる.

(1)clinical question(CQ)を作る
(2)evidence を集め,その重み(Class)を決める
(3)そこから結論(Level)を導く

でもこのプロセスは,ガイドラインがないような症例数の多くない神経疾患の患者さんの診療の方針を立てるときに行っていることと似てはいないだろうか?知らず知らずのうちにCQを作り,PubMedを検索し,患者さんの治療方針を決定しているはずである.つまり,AANのガイドラインの作成法を理解することは,日常の診療の方針を決定する際に役に立つはずである.

② CQをどのように作るか?

CQは具体的な臨床上の疑問点に対し,返答できる疑問文の形で作る.この手順はformatting the questions(疑問・課題の定式化),ないしformulating answerable questions(答えやすいように課題をまとめる)と呼ばれている.具体的には,PICOまたはPECOと呼ばれる4つの要素を含んだ形式でつくるとよい.

患者(Patient):疾患/病態も含む
介入, 危険因子(Intervention/Exposure)
対照(Comparison)
アウトカム(Outcome)

つまり,いかのような疑問文の形にするのである.
Pに,Iをすると (or Eがあると),Cに比べてOの診断ができるか?
Pに,Iをすると (or Eがあると),Cに比べてOになるか?

CQをつくり,それに沿った形で論文を検索することの利点としてAANは以下の6点を挙げている.

(1) 包括的な結果をサーベイできる
(2) 治療計画の立案,治療方法の選択をエビデンスに基づいて行う
(3) 論理展開を学ぶことにより,臨床的問題解決のための思考力をアップする
(4) 各自のオリジナルな発想に基づく治療計画,手法を改善・改良できる
(5) 情報を更新することにより,常に新たな気持ちで臨床に臨むことができる
(6) 患者,自分自身,社会にとって良質な医療の実践につながる

個人的には,これに加え,
(7) 答えのないCQは将来行うべき臨床研究の課題につながる,すなわち新たなエビデンスをつくるきっかけとして重要であると考えている.

② Evidenceをどう評価するか?

まず論文を検索する(このとき単にPubMedで検索するのではなく,MeSHブラウザーを用いたり,Limitsでevidenceレベルを絞って検索する技術は知っておく必要がある.文末を参照).検索するtermを決め,さらに検索された論文のうち,peer reviewされていない論文は含めないなど取捨選択の基準を決めておく.つぎに集まった各論文ごとのevidenceレベルを決定する.AANでは以下のようにClass I~IVに各論文を分類し,その組み合わせによってつぎに推奨レベルを決定している.

Class I;十分に計画された厳格な方法に則ったランダム化比較試験(RCT)であること
RCTとは,治験及び臨床試験において,データの偏り(bias)を軽減するため,被験者を無作為に治験薬群と対照群(プラセボ群)に割り付けて実施し,評価(masked / object outcome assessment)を行う試験
Class II;RCTだが,厳密な方法に則っていないもの
Class III;RCT以外の対照群をおいた臨床研究
Class IV;Class I~III以外,専門家の意見など

③  どのように結論を導くか?

結論は以上の推奨のレベルを持って行うが,それらは「患者の予後やケアを改善する」ことを目指したものでなければならない.結論にはpositiveなもの(行うべきという推奨)と,negativeなもの(行ってはいおけないという推奨)の両方が存在することにも留意する.具体的には,recommendationのレベルは,論文のClassをもとに決定する.たとえば治療に関してはレベルは以下の4種類に分けられる.

A. Established as effective treatment
B. Probably effective treatment
C. Possibly effective treatment
U. Unproven

レベルA;Class Iが2個以上存在
レベルB;Class Iが1個,もしくはClass IIが2個以上
レベルC;Class IIが1個,もしくはClass IIIが2個以上
レベルU;上記に当てはまらない

さぁ,以上を踏まえ,ガイドラインを読みたいと思う.

Neurology 73:1218-1226, 2009 

以下,おまけ.
★ MeSHブラウザーは「洩れなく」検索するために必要
MeSHとはMedical Subject Headings の頭文字.米国国立医学図書館 (NLM) が定める生命科学用語集(シソーラス).NLMがMEDLINEデータベースにおいて文献を管理する際,文献の内容を表す適切な用語を10~15個程度文献に付与し,この用語により文献を検索・管理できるようにしているが,このときMeSHの用語を用いる.MeSHは毎年改訂されて新しい概念や語句が追加・修正されている.

(例)胃癌のMeSHはgastric cancerではなく「Stomach neoplasms」.Wilson病は「hepatolenticular degeneration」など.これらのMeSHを検索termにすれば,胃癌とWilson病の論文はすべて検索できる.

★ Limitsを使用し,evidence levelという篩をかける
MeSHでもれなく検索して, Limits(advanced search)をかけてRCT論文, Meta-analysis論文のみ検索するといったことを行う.
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