ときどき父から「睡眠専門医の資格を持っていても,親の不眠症ひとつ良くすることができないのか・・・」と嘆かれます.私も我ながら不甲斐なく思います.さてこの週末,日本睡眠学会第45回定期学術集会(横浜)に参加し,指導医講習会と標題のセミナーに参加しました.「認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;CBT)」は心理療法のひとつで,私が関心を持っている機能性神経障害の治療でも使われます.しかし脳神経内科医には馴染みがなく,しっかりする勉強する必要性を感じていました.
【認知行動療法はストレス反応の4つの側面のうち「認知」と「行動」にアプローチする】
まずCBTの考え方についてまとめます.ストレスを感じる出来事が起きた時に「頭の中に浮かぶ考え(認知)」,「感じる気持ち(感情)」,「体の反応(身体)」,「振る舞い(行動)」に注目します(図1).
つまり「ストレス反応」は上記の4つの側面に分けられるわけですが,それらは互いに影響を及ぼし合い悪循環を生み出します.CBTは,この4側面のうち,自分の意志でコントロールしやすい「認知」や「行動」の幅を広げたり,変えたりすることで,気分や身体を楽にして,ストレスとうまく付き合っていけるようにすることを目指します.つまり「認知」と「行動」に以下の技法によりアプローチする心理療法がCBTになります.
◆行動:生活リズムを整えたり,喜びや達成感がある活動を増やす「行動活性化」という技法
◆認知:出来事に対する考えを見直したり,考えの幅を広げたりする「認知再構成」という技法
参考:そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?(NCNP病院ホームページ)
【不眠症に対する認知行動療法】
不眠症に対する治療として,日本では睡眠薬が一般的で,心理療法はほとんど実施されていません.しかし不眠症に対する認知行動療法(CBT for insomnia;CBT-I)はすでに治療プロトコールが確立しており,エビデンスレベルも高く,米国などの海外では第一選択の治療となっています!睡眠薬のような即効性はありませんが,治療終了後も効果が持続するというメリットがあります.
CBT-Iの目的は,不眠の原因となっている生活や睡眠習慣を明らかにし修正することによって睡眠改善につながる生活習慣を身につけることです.一回50分のセッションを合計5~6回実施します(図2:東京新聞より引用).
CBT-Iのセミナーでは,以下のようなものを学びました.
1.患者さんとの治療関係の構築と睡眠状態の把握
2.不眠症を理解する(睡眠教育,睡眠衛生教育)
3.眠りを促すリラックス法(漸進的筋弛緩法)
4.適切な睡眠パターンを取り戻す(睡眠スケジュール法)
5.再発予防
以下がキーワードの解説です.
◆睡眠ダイアリー(日誌):睡眠日誌を記録するだけで生活習慣と睡眠の関連に気づいて不眠が改善する人もいる
◆睡眠教育・睡眠衛生:不眠の発生メカニズム,睡眠段階と年齢の関係,体温と睡眠,睡眠と覚醒リズム,生活習慣と睡眠などの正しい知識を学ぶ.
◆漸進的筋弛緩法:身体の様々な部位に力を入れて抜くことを繰り返し,力の抜き方を習得する技法.寝る前に筋弛緩法を実施してリラックス状態で入床する.
◆睡眠スケジュール法:実際に寝ている時間と寝床で横になってる時間のずれを修正する.例えば実際の睡眠時間が6時間の人が,10時間寝床に入っていたとすると睡眠の密度が薄くなり,質が低下してしまう.そこで睡眠の質を高めるために,臥床時間を実質の睡眠時間+30分に設定し,それに合わせて就床-起床時刻を決め,1週間実施する,高い睡眠の質を確保しながら実際の睡眠時間を伸ばしていく.
日本睡眠学会の「不眠症に対する認知行動療法マニュアル(図3)」は前半がマニュアル,後半が実際に使える説明資料になっていてオススメです.薄めの本ですが,私もこれを読んで概略が掴めました.父にも1冊お送りしました.
またCBT-Iを実践するためのアプリ「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」も厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し,近日使用可能になるそうです.ただし治療効果は,個別治療>マニュアルに基づく治療>アプリでの治療の順になります.
一般の医師が外来で行うのは難しく,セミナーの参加も心理療法士の方が多いのかなと思いました.しかし医師もこの内容を理解していれば,患者さんへの不眠症への指導は大きく変わる感じがしました.
【認知行動療法はストレス反応の4つの側面のうち「認知」と「行動」にアプローチする】
まずCBTの考え方についてまとめます.ストレスを感じる出来事が起きた時に「頭の中に浮かぶ考え(認知)」,「感じる気持ち(感情)」,「体の反応(身体)」,「振る舞い(行動)」に注目します(図1).
つまり「ストレス反応」は上記の4つの側面に分けられるわけですが,それらは互いに影響を及ぼし合い悪循環を生み出します.CBTは,この4側面のうち,自分の意志でコントロールしやすい「認知」や「行動」の幅を広げたり,変えたりすることで,気分や身体を楽にして,ストレスとうまく付き合っていけるようにすることを目指します.つまり「認知」と「行動」に以下の技法によりアプローチする心理療法がCBTになります.
◆行動:生活リズムを整えたり,喜びや達成感がある活動を増やす「行動活性化」という技法
◆認知:出来事に対する考えを見直したり,考えの幅を広げたりする「認知再構成」という技法
参考:そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?(NCNP病院ホームページ)
【不眠症に対する認知行動療法】
不眠症に対する治療として,日本では睡眠薬が一般的で,心理療法はほとんど実施されていません.しかし不眠症に対する認知行動療法(CBT for insomnia;CBT-I)はすでに治療プロトコールが確立しており,エビデンスレベルも高く,米国などの海外では第一選択の治療となっています!睡眠薬のような即効性はありませんが,治療終了後も効果が持続するというメリットがあります.
CBT-Iの目的は,不眠の原因となっている生活や睡眠習慣を明らかにし修正することによって睡眠改善につながる生活習慣を身につけることです.一回50分のセッションを合計5~6回実施します(図2:東京新聞より引用).
CBT-Iのセミナーでは,以下のようなものを学びました.
1.患者さんとの治療関係の構築と睡眠状態の把握
2.不眠症を理解する(睡眠教育,睡眠衛生教育)
3.眠りを促すリラックス法(漸進的筋弛緩法)
4.適切な睡眠パターンを取り戻す(睡眠スケジュール法)
5.再発予防
以下がキーワードの解説です.
◆睡眠ダイアリー(日誌):睡眠日誌を記録するだけで生活習慣と睡眠の関連に気づいて不眠が改善する人もいる
◆睡眠教育・睡眠衛生:不眠の発生メカニズム,睡眠段階と年齢の関係,体温と睡眠,睡眠と覚醒リズム,生活習慣と睡眠などの正しい知識を学ぶ.
◆漸進的筋弛緩法:身体の様々な部位に力を入れて抜くことを繰り返し,力の抜き方を習得する技法.寝る前に筋弛緩法を実施してリラックス状態で入床する.
◆睡眠スケジュール法:実際に寝ている時間と寝床で横になってる時間のずれを修正する.例えば実際の睡眠時間が6時間の人が,10時間寝床に入っていたとすると睡眠の密度が薄くなり,質が低下してしまう.そこで睡眠の質を高めるために,臥床時間を実質の睡眠時間+30分に設定し,それに合わせて就床-起床時刻を決め,1週間実施する,高い睡眠の質を確保しながら実際の睡眠時間を伸ばしていく.
日本睡眠学会の「不眠症に対する認知行動療法マニュアル(図3)」は前半がマニュアル,後半が実際に使える説明資料になっていてオススメです.薄めの本ですが,私もこれを読んで概略が掴めました.父にも1冊お送りしました.
またCBT-Iを実践するためのアプリ「サスメド Med CBT-i 不眠障害用アプリ」も厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し,近日使用可能になるそうです.ただし治療効果は,個別治療>マニュアルに基づく治療>アプリでの治療の順になります.
一般の医師が外来で行うのは難しく,セミナーの参加も心理療法士の方が多いのかなと思いました.しかし医師もこの内容を理解していれば,患者さんへの不眠症への指導は大きく変わる感じがしました.