第18回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(大会長 村松慎一先生)のイブニングビデオセッションにて,当科森泰子先生が「しびれ感,筋力低下とともに不随意運動を呈した60歳男性」の発表をしました.手袋靴下型のしびれ感,四肢筋力低下とともに認知機能障害,四肢の顕著なミオクローヌス(陽性+陰性?),偽アテトーゼを呈しました.前医で行ったIVIG,IVMPとも無効.脊髄MRIで神経根の肥大.脳脊髄液タンパク著明高値.以上よりノドパチーを疑い,血清Caspr1抗体陽性が判明.中枢神経症状にもこの抗体が関与した可能性を疑い,脳脊髄液中を検索したところやはり抗体陽性(Caspr1は中枢神経にも存在します).ラット脳を用いた免疫染色でも陽性.リツキシマブによる治療を行ったところいずれの症状もほぼ消失・・・ということでCaspr1抗体が自己免疫性脳炎を来しうる可能性を初めて示した症例報告でした(投稿中).
以下,その他の12例のメモになります.とても勉強になりました.
1.頭痛とともに四肢の不随意運動を繰り返す20歳代女性
拍動性頭痛時に出現する上下肢の安静時・姿勢時の不規則なミオクローヌス.
診断:孤発性の片麻痺性片頭痛:遺伝子解析は未施行(片麻痺なし,かつ不随意運動も上肢と下肢で左右が同側でない点はatipicalか.機能性ミオクローヌスも鑑別に上がりそう?)
2.下肢不随意運動を認めたアレキサンダー病(59歳男性)
脳幹から脊髄のtadpole appearanceを示す遺伝子診断で確定したアレキサンダー病の両下肢の不随意運動を何と表現するか?
症候:周期性四肢運動障害が覚醒時に出現したものという意見もあったが,一定間隔をおいて出現する三重屈曲現象様であり,脊髄自動反射(spinal automatism)ではないかということになった.
3.音楽ゲームプレイ中に不随意運動が出現した20歳代男性
左右の手指をつかって非常に早くタップする,いわゆる「音ゲー」を長期間行ってきたところ,左手指がうまく使えなくなった.
診断:音楽ゲームに伴うfocal task-specific dystonia
4.高齢発症で四肢舞踏運動を呈した白質脳症の1例(74歳女性)
全身性の舞踏運動で,左下肢にやや目立つ.MRIでは大脳白質のびまん性信号異常.脳脊髄液オリゴクローナルバンド陽性.
診断:AQP4抗体陽性NMOSD(近年,AQP4抗体陽性例でびまん性白質病変を呈した症例報告はあるが,症候が非典型的なので,他の抗神経抗体が存在する(double positive)可能性も検討すべき.抗体としては自己免疫性舞踏病を来す抗体としてはNMDAR,CV2/CRMP5,LGI1,IgLON5などがあるとコメントさせていただいた.
5.パーキンソニズムで発症し,下肢の痙性と認知機能障害を呈した39歳男性
常染色体潜性遺伝性の早発型パーキンソニズム.姿勢保持障害,下肢痙性,認知機能低下,L-DOPA反応性あり.
診断:PARK7(DJ-1遺伝子変異)
6.薬剤性口舌ジスキネジアの1例(50歳代男性)
口舌ジスキネジア,spasmodic dysphoani.スルピリド,リスペリドンにより増悪.薬剤性が疑われたが,家族内類症あり.L-DOPA反応性あり.
診断:DYT5(瀬川病)
7.歩けるけど走れない13歳女子
3歳から歩けるけど走れなかった.走ると膝が曲がらなくなりスピードが出ない.開閉剛を繰り返すとだんだん困難になる.症候の評価は意見が分かれた(muscle stiffness?dystonia?neuromyotonia?)針筋電図正常.
診断:Brody病(ATP2A1遺伝子複合ヘテロ).運動誘発性の筋硬直を特徴とする常染色体劣性ミオパチーとのこと.きわめて稀な疾患で本邦初の報告.
8.しびれ感,筋力低下とともに不随意運動を呈した60歳代男性
診断:中枢神経症状を伴うCaspr1抗体関連ノドパチー
9.2相性の顎開口ジストニアに対しホスレボドパ/ホスカルビドパ持続皮下注射療法が奏効したパーキンソン病男性
症候:CSCIに伴うdiphasic dystoniaとして,jaw-opening dystoniaが出現した症例.
10.感染性腸炎に対して意識障害と刺激誘発性の姿勢異常を呈した54歳男性
ベトナム渡航後の感染性腸炎後の構音障害,意識障害,心肺停止.経過中に吸引で手足を引っ込めるような運動異常を認めた.症候からPERMや脳皮質硬直などが議論されたが,診断はGM1+,GD1a+でBickerstaff脳幹脳炎とのこと.
11.踊るような激しい四肢の不随意運動を呈した42歳男性
上肢ジストニア,下肢バリズム様の不随意運動.MRIのは正常,しかしDAT取り込み低下.
診断:dancing-feet dyskinesiaを伴ったGBA遺伝子変異を伴うパーキンソン病(dancing-feet dyskinesiaという既報があるとのこと)
12.原因不明の進行性不随意運動を呈する男性例(48歳)
体幹ミオクローヌス.歩行時に左手を前方に伸ばし手指に不随意運動が出現する.頸部にも不随意運動.症候はexercise-induced dystoniaで,診断については遺伝性ジストニアやハンチントン病などが議論されたがまだ診断不明とのこと.車椅子は非常にうまく操れる(車椅子サインはFNDでもよく見られるが・・・)
診断:未確定
13.両下肢の筋力低下と振戦が目立った50歳女性例
亜急性に進行する安静時振戦,起立時の振戦,下肢の筋力低下.腱反射やや亢進.
診断:Basedow病に伴うthyrotoxic myopathy.
以下,その他の12例のメモになります.とても勉強になりました.
1.頭痛とともに四肢の不随意運動を繰り返す20歳代女性
拍動性頭痛時に出現する上下肢の安静時・姿勢時の不規則なミオクローヌス.
診断:孤発性の片麻痺性片頭痛:遺伝子解析は未施行(片麻痺なし,かつ不随意運動も上肢と下肢で左右が同側でない点はatipicalか.機能性ミオクローヌスも鑑別に上がりそう?)
2.下肢不随意運動を認めたアレキサンダー病(59歳男性)
脳幹から脊髄のtadpole appearanceを示す遺伝子診断で確定したアレキサンダー病の両下肢の不随意運動を何と表現するか?
症候:周期性四肢運動障害が覚醒時に出現したものという意見もあったが,一定間隔をおいて出現する三重屈曲現象様であり,脊髄自動反射(spinal automatism)ではないかということになった.
3.音楽ゲームプレイ中に不随意運動が出現した20歳代男性
左右の手指をつかって非常に早くタップする,いわゆる「音ゲー」を長期間行ってきたところ,左手指がうまく使えなくなった.
診断:音楽ゲームに伴うfocal task-specific dystonia
4.高齢発症で四肢舞踏運動を呈した白質脳症の1例(74歳女性)
全身性の舞踏運動で,左下肢にやや目立つ.MRIでは大脳白質のびまん性信号異常.脳脊髄液オリゴクローナルバンド陽性.
診断:AQP4抗体陽性NMOSD(近年,AQP4抗体陽性例でびまん性白質病変を呈した症例報告はあるが,症候が非典型的なので,他の抗神経抗体が存在する(double positive)可能性も検討すべき.抗体としては自己免疫性舞踏病を来す抗体としてはNMDAR,CV2/CRMP5,LGI1,IgLON5などがあるとコメントさせていただいた.
5.パーキンソニズムで発症し,下肢の痙性と認知機能障害を呈した39歳男性
常染色体潜性遺伝性の早発型パーキンソニズム.姿勢保持障害,下肢痙性,認知機能低下,L-DOPA反応性あり.
診断:PARK7(DJ-1遺伝子変異)
6.薬剤性口舌ジスキネジアの1例(50歳代男性)
口舌ジスキネジア,spasmodic dysphoani.スルピリド,リスペリドンにより増悪.薬剤性が疑われたが,家族内類症あり.L-DOPA反応性あり.
診断:DYT5(瀬川病)
7.歩けるけど走れない13歳女子
3歳から歩けるけど走れなかった.走ると膝が曲がらなくなりスピードが出ない.開閉剛を繰り返すとだんだん困難になる.症候の評価は意見が分かれた(muscle stiffness?dystonia?neuromyotonia?)針筋電図正常.
診断:Brody病(ATP2A1遺伝子複合ヘテロ).運動誘発性の筋硬直を特徴とする常染色体劣性ミオパチーとのこと.きわめて稀な疾患で本邦初の報告.
8.しびれ感,筋力低下とともに不随意運動を呈した60歳代男性
診断:中枢神経症状を伴うCaspr1抗体関連ノドパチー
9.2相性の顎開口ジストニアに対しホスレボドパ/ホスカルビドパ持続皮下注射療法が奏効したパーキンソン病男性
症候:CSCIに伴うdiphasic dystoniaとして,jaw-opening dystoniaが出現した症例.
10.感染性腸炎に対して意識障害と刺激誘発性の姿勢異常を呈した54歳男性
ベトナム渡航後の感染性腸炎後の構音障害,意識障害,心肺停止.経過中に吸引で手足を引っ込めるような運動異常を認めた.症候からPERMや脳皮質硬直などが議論されたが,診断はGM1+,GD1a+でBickerstaff脳幹脳炎とのこと.
11.踊るような激しい四肢の不随意運動を呈した42歳男性
上肢ジストニア,下肢バリズム様の不随意運動.MRIのは正常,しかしDAT取り込み低下.
診断:dancing-feet dyskinesiaを伴ったGBA遺伝子変異を伴うパーキンソン病(dancing-feet dyskinesiaという既報があるとのこと)
12.原因不明の進行性不随意運動を呈する男性例(48歳)
体幹ミオクローヌス.歩行時に左手を前方に伸ばし手指に不随意運動が出現する.頸部にも不随意運動.症候はexercise-induced dystoniaで,診断については遺伝性ジストニアやハンチントン病などが議論されたがまだ診断不明とのこと.車椅子は非常にうまく操れる(車椅子サインはFNDでもよく見られるが・・・)
診断:未確定
13.両下肢の筋力低下と振戦が目立った50歳女性例
亜急性に進行する安静時振戦,起立時の振戦,下肢の筋力低下.腱反射やや亢進.
診断:Basedow病に伴うthyrotoxic myopathy.