第33回日本神経治療学会総会の特別企画である「臨床研究デザインワークショップ」に参加させていただいた.臨床研究は非常に大切であるものの,医学部の授業で教わるような機会は一切なかった.このため多くの医師は独学で試行錯誤しているのではないかと思う.
今回の神経治療学会総会では,創薬・育薬や臨床研究(治験)が重要なテーマとなっているが,プログラムの一貫として,臨床研究はどのように行ったらよいかを学ぶワークショップが初めて開催された.私も募集とともに申し込みをし,参加させていた.20名の参加者が5グループに分かれ,11名ものファシリテーターのご指導やご助言をいただきながら,臨床現場の疑問からリサーチクエスチョンを立てる方法,さらには質の高い臨床研究計画を立案する方法を学ばせていただいた.初学者向きとのことであったが学ぶべきことは多く,かつ学生・若手医師をどのように指導したらよいのか,大変,参考になった.来年以降も継続予定とのことで,ぜひご参加されることをおすすめしたい.以下に勉強したことをまとめてみたい.
【臨床疑問から研究疑問へ】
・臨床研究7つのご法度(福原俊一著「リサーチクエスチョンの作り方」より)
1.データを取ってから研究デザインを考える.
2.研究疑問(Research question; RQ)が明確,具体的ではない.
3.研究対象が不明確.抽出方法,組み入れ・除外基準を設定していない.
4.主要アウトカム変数を設定していない.
5.変数の測定方法の信頼性と妥当性を検討していない.
6.解析計画を事前に作成していない.サンプルサイズ,パワー,効果量を事前に設定していない.
7.結果の解釈:統計的有意差のみで,臨床的・社会的に意味のある差かどうか検討していない.
・RQは漠然とした疑問を研究可能な形にすることである.
・RQはプロトコール作成の骨組みになる.
・RQの要件は「FINER Criteria」としてまとめることができる.これを研究開始前に見直すことが重要.
Feasible(実行可能)
Interesting(興味深い)
Novel(新規性がある)
Ethical(倫理的である)
Relevant(必要性が高い)
・RQの構造化はPECO+TないしPICO+Tで行う.
Patient or clinical problem(誰に)
Exposure/Intervention(何をすると)
Comparison(何と比較して)
Outcome(どうなる)
Time(どんなタイミングで)
・PECOは「リスク要因の同定」に,PICOは「治療・予防法の評価」に使用する.
・Pは,より特異的に設定できているか,アウトカムを生じやすい集団かに注意する.
・Eは,診断方法,スクリーニング検査,危険因子,暴露の検討に用いられる.
・また暴露要因は修正可能であるものが望ましい.もし修正できないものであれば,予防や治療につながらないためである.
・Iでは倫理的な面に留意し,標準的治療を比較対照に選ぶ.
・観察研究では交絡(因子)の調整が必要である.
・主要アウトカムは,患者・医療・社会にとって価値のあるものを選ぶ.
【研究デザイン】
・分析的疫学研究には,横断研究,症例対照研究,(前向き)コホート研究がある.それぞれの長所・短所の理解が大切.
・「横断研究」は,ある時点での研究対象者の暴露要因と疾患の療法のデータを収集する.欠点は原因と結果の決定が困難であること,希少疾患,希少暴露を扱うには問題があること,精神疾患のように悪化・寛解するようなものの場合,見逃す可能性あることである.
・「症例対照研究」は,ケースと対照をまず選び,両者における過去の暴露の有無を確認する研究である.希少疾患には有用であるが,比較可能な対照を得るのに工夫が必要で,過去のことをどれだけ覚えているかという記憶バイアスが問題になることもある.
・「(前向き)コホート研究」は曝露群と非曝露群を同定後,前向きにアウトカムを確かめる研究である.アウトカムは複数設定することができるため,複数の研究を行うことが可能である.利点として,因果関係を推定できる.欠点としては,莫大な費用と期間を要すること,希少性疾患には向かないことがあげられる.
・一方,実験的研究としては,無作為割り付け試験(RCT)がある.これは介入に無作為割付を行い,一定時間後にアウトカム評価を行うものである.RCTに向かない研究としては,アウトカム発生率が低いもの,脱落率が高いもの,研究期間が長くかかるもの,倫理的に問題があるものが挙げられる.
今回の神経治療学会総会では,創薬・育薬や臨床研究(治験)が重要なテーマとなっているが,プログラムの一貫として,臨床研究はどのように行ったらよいかを学ぶワークショップが初めて開催された.私も募集とともに申し込みをし,参加させていた.20名の参加者が5グループに分かれ,11名ものファシリテーターのご指導やご助言をいただきながら,臨床現場の疑問からリサーチクエスチョンを立てる方法,さらには質の高い臨床研究計画を立案する方法を学ばせていただいた.初学者向きとのことであったが学ぶべきことは多く,かつ学生・若手医師をどのように指導したらよいのか,大変,参考になった.来年以降も継続予定とのことで,ぜひご参加されることをおすすめしたい.以下に勉強したことをまとめてみたい.
【臨床疑問から研究疑問へ】
・臨床研究7つのご法度(福原俊一著「リサーチクエスチョンの作り方」より)
1.データを取ってから研究デザインを考える.
2.研究疑問(Research question; RQ)が明確,具体的ではない.
3.研究対象が不明確.抽出方法,組み入れ・除外基準を設定していない.
4.主要アウトカム変数を設定していない.
5.変数の測定方法の信頼性と妥当性を検討していない.
6.解析計画を事前に作成していない.サンプルサイズ,パワー,効果量を事前に設定していない.
7.結果の解釈:統計的有意差のみで,臨床的・社会的に意味のある差かどうか検討していない.
・RQは漠然とした疑問を研究可能な形にすることである.
・RQはプロトコール作成の骨組みになる.
・RQの要件は「FINER Criteria」としてまとめることができる.これを研究開始前に見直すことが重要.
Feasible(実行可能)
Interesting(興味深い)
Novel(新規性がある)
Ethical(倫理的である)
Relevant(必要性が高い)
・RQの構造化はPECO+TないしPICO+Tで行う.
Patient or clinical problem(誰に)
Exposure/Intervention(何をすると)
Comparison(何と比較して)
Outcome(どうなる)
Time(どんなタイミングで)
・PECOは「リスク要因の同定」に,PICOは「治療・予防法の評価」に使用する.
・Pは,より特異的に設定できているか,アウトカムを生じやすい集団かに注意する.
・Eは,診断方法,スクリーニング検査,危険因子,暴露の検討に用いられる.
・また暴露要因は修正可能であるものが望ましい.もし修正できないものであれば,予防や治療につながらないためである.
・Iでは倫理的な面に留意し,標準的治療を比較対照に選ぶ.
・観察研究では交絡(因子)の調整が必要である.
・主要アウトカムは,患者・医療・社会にとって価値のあるものを選ぶ.
【研究デザイン】
・分析的疫学研究には,横断研究,症例対照研究,(前向き)コホート研究がある.それぞれの長所・短所の理解が大切.
・「横断研究」は,ある時点での研究対象者の暴露要因と疾患の療法のデータを収集する.欠点は原因と結果の決定が困難であること,希少疾患,希少暴露を扱うには問題があること,精神疾患のように悪化・寛解するようなものの場合,見逃す可能性あることである.
・「症例対照研究」は,ケースと対照をまず選び,両者における過去の暴露の有無を確認する研究である.希少疾患には有用であるが,比較可能な対照を得るのに工夫が必要で,過去のことをどれだけ覚えているかという記憶バイアスが問題になることもある.
・「(前向き)コホート研究」は曝露群と非曝露群を同定後,前向きにアウトカムを確かめる研究である.アウトカムは複数設定することができるため,複数の研究を行うことが可能である.利点として,因果関係を推定できる.欠点としては,莫大な費用と期間を要すること,希少性疾患には向かないことがあげられる.
・一方,実験的研究としては,無作為割り付け試験(RCT)がある.これは介入に無作為割付を行い,一定時間後にアウトカム評価を行うものである.RCTに向かない研究としては,アウトカム発生率が低いもの,脱落率が高いもの,研究期間が長くかかるもの,倫理的に問題があるものが挙げられる.