レストレスレッグス症候群(RLS),別名むずむず脚症候群/Ekbom症候群は,不快感のため足を動かしたい衝動(urge to move the legs)を呈する疾患である.しかし足以外にも,自然経過もしくは治療によるaugmentationにより,症状が広がり,全身に及ぶことがある.しかし足に症状がなく,お腹にだけ,むずむず症状を来すということがあり,「むずむず腹症候群」として報告されている(Neurology 77; 1283-1286, 2011).これにはとても驚いたので,過去のブログにて紹介した.
驚きの・・・むずむず「口」症候群
今回,なんと口にだけむずむず症状が出現した症例が報告され,さらに,これまでburning mouth syndrome(口腔灼熱症候群)と呼ばれていた症例のなかに同様の症例が含まれているのではないかという指摘がなされているのでご紹介したい.
症例は60歳男性,主訴は口の不快感.転倒による頸部の外傷後,2-3ヶ月して口の不快感が出現した.部分的に腫れてしびれた感じであったが,痛みや灼熱感はなし.徐々に舌や両側頬の表面,そして口全体に広がった.リラックスし,口を開けている時には症状は悪化する.顎を動かしたい衝動が出現し(urge to move his jaw),実際に顎や舌を動かすと症状は一時的に改善する.ガムを噛んでも良くなるが,完全には消失しない.口を閉じていると改善しうるため,バンドで固定していた.日内変動があり,午前中に症状が出現し,夜になると悪化した.寝るときは枕で顎を固定すれば眠ることができた.三叉神経痛,頭痛,末梢神経障害,RLSの既往や家族歴なし.薬剤使用歴なし.口腔内乾燥を含め全身および神経診察に異常なし.検査所見(画像,脳波,針筋電図)でも特記すべき異常なし.
ガバペンチンとプレガバリン,オクスカルバゼピンは効果なし.食事や発語による顔面の症状の増悪は三叉神経痛で見られるが,本例では逆に改善がみられたことから,RLSが口にのみ出現している可能性を疑い,プラミペキソールの処方を開始.0.125mgを1日3回として外来で経過を見たところ,1ヶ月後に症状は軽減,ガムを噛まなくてもよくなった.5ヶ月後,1日0.5mg(0.125mg-0.25 mg-0.125mg)で改善は維持されている.
興味深いことに,過去に少なくとも12例のburning mouth syndromeで,ドパミンアゴニストにより症状が改善した症例が報告されている.12例中11例は夜に増悪し,10例は食事や会話などの口の運動で改善している.また一部の症例はRLSを併発している.国際RLS研究班(International restless legs syndrome study group:IRLSSG)による改訂診断基準を満たす症例がある.
1: 脚を動かしたくてたまらない衝動と不快感
2: 安静時に悪化
3: 脚の運動により不快感が軽減ないし消失
4: 夕方から夜に悪化
5: これらの特徴を持つ症状が,他の疾患・習慣的行動で説明できない
近年,RLSは四肢に症状を認めなくても他の身体部位に出現しうることが報告され,このような非典型例に関する総説もごく最近出版された(Sleep Med Rev. 2017 Apr 4. pii: S1087-0792(17)30080-1).これによると,会陰,腹部,膀胱の症状が,古典的なRLSを伴ったり,伴わなかったりで出現する.この総説で,とくに注目しているのがburning mouth syndromeと会陰部の症状を呈するrestless genital syndromeである.このような非典型的な部位であっても,RLS的な特徴を認めたら,まずIRLSSG改訂診断基準に当てはめること(ただし項目の1と3は身体部位によっては診断基準を当てはめにくいので工夫が必要),そしてドパミンアゴニストを処方し,治療的診断を行うことを提唱している.このようにいろいろな部位にRLS症状が出現しうることを知って,疑うことが大切である(マンガのように尻尾にもむずむずが出現して,動かさずにいられないこともある・笑).
Restless mouth syndrome. Neurology Clin Practice 2017
驚きの・・・むずむず「口」症候群
今回,なんと口にだけむずむず症状が出現した症例が報告され,さらに,これまでburning mouth syndrome(口腔灼熱症候群)と呼ばれていた症例のなかに同様の症例が含まれているのではないかという指摘がなされているのでご紹介したい.
症例は60歳男性,主訴は口の不快感.転倒による頸部の外傷後,2-3ヶ月して口の不快感が出現した.部分的に腫れてしびれた感じであったが,痛みや灼熱感はなし.徐々に舌や両側頬の表面,そして口全体に広がった.リラックスし,口を開けている時には症状は悪化する.顎を動かしたい衝動が出現し(urge to move his jaw),実際に顎や舌を動かすと症状は一時的に改善する.ガムを噛んでも良くなるが,完全には消失しない.口を閉じていると改善しうるため,バンドで固定していた.日内変動があり,午前中に症状が出現し,夜になると悪化した.寝るときは枕で顎を固定すれば眠ることができた.三叉神経痛,頭痛,末梢神経障害,RLSの既往や家族歴なし.薬剤使用歴なし.口腔内乾燥を含め全身および神経診察に異常なし.検査所見(画像,脳波,針筋電図)でも特記すべき異常なし.
ガバペンチンとプレガバリン,オクスカルバゼピンは効果なし.食事や発語による顔面の症状の増悪は三叉神経痛で見られるが,本例では逆に改善がみられたことから,RLSが口にのみ出現している可能性を疑い,プラミペキソールの処方を開始.0.125mgを1日3回として外来で経過を見たところ,1ヶ月後に症状は軽減,ガムを噛まなくてもよくなった.5ヶ月後,1日0.5mg(0.125mg-0.25 mg-0.125mg)で改善は維持されている.
興味深いことに,過去に少なくとも12例のburning mouth syndromeで,ドパミンアゴニストにより症状が改善した症例が報告されている.12例中11例は夜に増悪し,10例は食事や会話などの口の運動で改善している.また一部の症例はRLSを併発している.国際RLS研究班(International restless legs syndrome study group:IRLSSG)による改訂診断基準を満たす症例がある.
1: 脚を動かしたくてたまらない衝動と不快感
2: 安静時に悪化
3: 脚の運動により不快感が軽減ないし消失
4: 夕方から夜に悪化
5: これらの特徴を持つ症状が,他の疾患・習慣的行動で説明できない
近年,RLSは四肢に症状を認めなくても他の身体部位に出現しうることが報告され,このような非典型例に関する総説もごく最近出版された(Sleep Med Rev. 2017 Apr 4. pii: S1087-0792(17)30080-1).これによると,会陰,腹部,膀胱の症状が,古典的なRLSを伴ったり,伴わなかったりで出現する.この総説で,とくに注目しているのがburning mouth syndromeと会陰部の症状を呈するrestless genital syndromeである.このような非典型的な部位であっても,RLS的な特徴を認めたら,まずIRLSSG改訂診断基準に当てはめること(ただし項目の1と3は身体部位によっては診断基準を当てはめにくいので工夫が必要),そしてドパミンアゴニストを処方し,治療的診断を行うことを提唱している.このようにいろいろな部位にRLS症状が出現しうることを知って,疑うことが大切である(マンガのように尻尾にもむずむずが出現して,動かさずにいられないこともある・笑).
Restless mouth syndrome. Neurology Clin Practice 2017